○選んだ作品:
『揺/炎』平大典(『安珍・清姫伝説』)
○選んだ理由:余計な修辞がなく、物語の推進力で読ませる。幸福な結末とは言えないが、明かされない謎と余韻の含みがあり、読み手の心を枝分かれさせる。
第10回ブックショートアワード12月期の優秀賞受賞者の皆様に、ご自分以外の作品のなかで最も面白いと思った作品をアンケートで答えていただきしました!
(順不同 / ご返信いただいた方のみ記載)
○選んだ作品:
○選んだ理由:余計な修辞がなく、物語の推進力で読ませる。幸福な結末とは言えないが、明かされない謎と余韻の含みがあり、読み手の心を枝分かれさせる。
○選んだ作品:
○選んだ理由:私も「さんまいのおふだ」は、原作が 面白いので 二次作品を 書こうと思ったこともあったのですが、舞台設定と、三段落ちの展開を作るのはかなり難しくて挫折しました。いやはや、この作品を読んで、思わず「うまい!!」とうなりました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:社会との接点が限られている幼い子どもにとって、現在の自分を取り巻く環境の比重、つまり何をよすがに人生をなんとかかんとかやっているかは、大人が思うそれよりずっと大きいものだと考えている。行事のたびに皆で集まる特別な家も慣習も、主人公のアイデンティティは勿論レゾンデートルともなり得るかけがえのないもの。それらを奪われることへのささやかな抵抗が、切実に、けれど過度な装飾のない清々しい筆致で描かれているところに共感と好感を持った。そしてわたし自身、死後に辿り着く場所は幼い頃、愛する父母と猫たちと過ごしたあのマンションの一室であろうと思っている。
○選んだ作品:
○選んだ理由:まさかの蜘蛛の糸をポールにしちゃうとは。。。面白い設定と、リズミカルな文章であっという間に読み終えちゃいました。蜘蛛の糸とは違い、読んだ後に思わずにっこりしてしまう結末でした。残酷な描写が無かったので読みやすかったのも嬉しかったです。
○選んだ作品:
○選んだ理由:走れメロスのリズム感そのままに、楽しい作品に仕上げられていました。「雨をよけられる」がじわじわ、笑えました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:蜘蛛の「糸」を、ポールに置き換える発想に始まり、物語が狂おしいほど抜群なセンスで溢れています。いつまでも浸っていたい素晴らしい作品でした。
○選んだ作品:
○選んだ理由:兄弟の醸し出す信頼が生む緩やかな雰囲気が、兄弟のいない僕の中にすんなり馴染んだことが不思議に嬉しく,彼らを取り巻く今後の変化と普遍的価値観に興味が湧いた。
○選んだ作品:
○選んだ理由:竹取物語を新しく解釈した上で、見事に現代版に昇華した作品だと思いました。物語全体の雰囲気も好きでした。
○選んだ作品:
○選んだ理由:物語の主人公が読者の期待に応えようとする、という斬新な切り口。その中で、ルッキズムや過剰なクレーマー対策など現代をしっかり揶揄している。完成度の高い作品だと感じました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:作者様の発想力がそこここに光っており、切なさも感じるラストも好きです。また、反論してる途中に挟まれる相槌がたまらなく好きです。
○選んだ作品:
○選んだ理由:幼い頃に自分を叩いていた母親への『許し』と、一度きりではあるけれど、そんな母親同様に我が子を叩いてしまった主人公への『救い』が、確かな筆致で記されていました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:書き出しから興味をひきつけられて、最後まであっという間に読み終わりました。少しずつ父の真相に近づいていくストーリーもよかったです。最後は温かな気持ちになれました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:派手派手なロック妖精なのに、最後の最後で今一つ押しが弱くって上手いことスカウトできない、っていうのが、想像してて面白かったです。断られた時に、どんな顔してたんだろ。食い下がらなかったのかなあ。お笑いで言うところのテンドンだけど、最後で笑っちゃいました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:死に触れることは、恐ろしく辛いことだと思います。この作品に登場する”父”は、葬儀社として多くの人の最期を見送り、個人として多くの野良猫を保護してその最期を見送り、人生をかけて他者の死と向き合い続けてきました。その理由についてはあえて語られていません。また、一見すると、その人物像と家族を捨てたという事実の間にギャップもあり、その裏には一体どういう想いがあったのか、想像を掻き立てられます。面白いと思う作品はいくつもありましたが、心に響くものがあったので、この作品を推薦いたします。
○選んだ作品:
○選んだ理由:長年連れ添った夫婦には平穏でない瞬間がいくつもあって、けれど今のふたりを見かけたら穏やかなご夫婦に見えるのだろうなと思います。ふたりの過ごしてきた時間に奥行きが感じられ、とても良かったです。
○選んだ作品:
○選んだ理由:兄の人柄がとても愛おしく感じました。読んでる間、ずっとニヤニヤしてました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:本来まっさらである子供だからこその、その言葉の苦しさを、読者として感じることが出来ました。主人公の苦悩の発生から最後の救済まで、合理的で、しかしきちんと物語的であり、今後手本としたいような作品だと感じたため、図々しいですが推薦させて頂きました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:逞しさが眩しかったです。船のアトラクションのように、流れに乗って物語の情景を眺めているようでした。
○選んだ作品:
○選んだ理由:人間の悪意をこうもカラリとしたユーモアで表現できるのだ、と感心しました。読後も、さっぱりと明るいイメージで気持ち良かったです。暗黒な老人たちのキラキラ光る塔という発想も好きです。
○選んだ作品:
○選んだ理由:わかりやすい構成とポップなキャラクター像ながら、自分でも驚くほど感動してしまいました。生きるのが嫌になる理由が山ほどある現代にこそ、ロン毛スタッズまみれ派手メイク中年男性の「ベイビー、生きてこそだぜ~!」は刺さる人も多いと思います。
○選んだ作品:
○選んだ理由:兄弟愛が爆発するユーモアなストーリーに思わずクスクス笑いながら読ませていただきました。家族3人の個性と、日常に潜むパラドックスが表現されてるところが、素晴らしいと思います。
○選んだ作品:
○選んだ理由:いくつもミステリの仕掛けがあり、シンプルに面白かったです。主題が「不倫」とタイムリーでありつつ、清姫を題材にしているので普遍的。嫉妬を男性で描くことでジェンダーな現代性も感じました。
ストーリーに入るのが簡潔で、すぐに展開していくのも好ましかったです。消防団が活躍する田舎のリアルな描写が映像に想像しやすく、人物描写も親近感を感じつつ危ういラインに変化していく様が鮮やかでした。読み返しさせていただきましたが、一度目より二度目の方が奥さんの性格が見えてきたり、他の消防団員たちの様子や主人公の年齢がはっきり見えて曲者ぶりが感じられたり、より楽しめました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:幼少期の辛い記憶と母への許せない気持ちを持った主人公が、自分も母となり同じ過ちをした自分を許せない気持ちがとても切なく描かれていました。病室の情景は、映像が流れるように浮かび、我が子の「許し」が主人公の心を救う場面は胸が熱くなりました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:義母の認知症がテーマなのかと思いましたが、もっと複雑な人間関係があり、複雑ですがその関係が淡々と丁寧に描かれていて読みやすく、読んでいて心地よかったです。また、作品中で描かれる問題を「正論」のようなまとめ方で終わらせるのではなく、登場人物それぞれがそれぞれの納得の仕方で落ち着くのも好きでした。
○選んだ作品:
○選んだ理由:冒頭から結末まで、太宰の文体(というよりメロスの文体)で、書ききった(むしろ、書き上げた?)ことがすごい! と思いました。その上、あの文体なのに(あの文体だからこそ?)くすっと笑えたり、あの文体なのに(あの文体だからこそ?)ほろりとさせられたり、あの文体なのに(あの文体だからこそ?)家族の情愛や信頼を感じることができるのも、楽しい。
デコピン兄弟、お母さんがいい育て方をしたんでしょうね……。
○選んだ作品:
○選んだ理由:筆者の物語構成の工夫や文学的表現によって、夏目漱石「夢十夜」の世界観が上手く再現されていたと思います。第一夜はギリシャ神話のナルキッソスと絡めて解説されますが、本作はギリシャ神話のウラノス、クロノスを想起させる物語構成となっており、そこも工夫を感じました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:自転車で追ってくる女の迫力が凄まじく、恐怖する主人公には悪いが笑ってしまった。モチーフとなった作品が現代風にアレンジされていて、とてもアイデアに富んだ作品でした。読み終わった後に、思わず懐かしくなりモチーフの作品がどんな内容だったか読み直しました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:タイトルに惹かれて読んで、なんやこれオモロイなあ、と感心して一気に読み終えて、またタイトルに戻った時にじわじわと来るギャップがとても好きでした。
○選んだ作品:
○選んだ理由:設定が秀逸だと思いました。発想の独自性もさることながら、どの描写にも神経が行き届いていて、一文一文が非常に美しかったです。精緻な彫刻のような、丁寧な作品でした。読ませてくださってありがとうございました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:「きっと大丈夫」とか「なんとかなる」といったような言葉を僕はどこかで強引だと思ってしまう。どうにもならない時もある。大丈夫かどうかわからない。本当の優しさとはそんな言葉のような気がする。先生が言った「認められても認められなくても、どっちでもいい」という言葉が深く僕の中に入ってきた。世間がどうであれ、周りがどうであれ、結局答えは「自分」の中にしか存在しないのだから。誰かに理解されようと生きるのは大変な事だ。自分を見失なってしまうことにもなりかねない。大切な事は「自分」を「自分自身」が一番理解してあげることなのかも知れないと思った。