○選んだ作品:
『注射を打つなら恋のように』入江巽(『細雪』谷崎潤一郎)
○選んだ理由:
独特のテンポ、個性的な文体が良い。人間の生々しくいたましい、愛すべき情動にあふれる内容は他にはなかなかない世界観だと思います。
第2回ブックショートアワードの最終候補者の皆様に、ご自分以外の作品のなかで最も面白いと思った作品をアンケートで答えていただきしました!さらに、2015年度、優秀作品に選ばれた皆様にも最も大賞にふさわしいと思う作品を選んでいただきました。
(順不同 / ご返信いただいた方のみ記載)
■最終候補者他薦アンケート
○選んだ作品:
○選んだ理由:
独特のテンポ、個性的な文体が良い。人間の生々しくいたましい、愛すべき情動にあふれる内容は他にはなかなかない世界観だと思います。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
どの候補作も非常に面白く、その中から一つを選ぶのは大変でしたが、私は大前粟生さんの「人殺し」を。とにかく態度が悪いです、この人の文章。ことごとく読み手の足場をぐらつかせて、思い通りに歩かせてくれません。立ち止まることもできません。そしてそれは心地よさへと変わっていきます。コーヒーを入れるときのお湯の湧く時間で、男がベランダで待つことになる描写。鳩サブレの袋の破り方に悩む場面。「ヤクザとしては追いかけたいところだ」の一文。などなど。痺れる表現が至る所にあり、人々が男を先頭に連なっていくクライマックスは圧巻でした。面白いです。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
得体が知れなかった。
入江さんの文体に、最初はぞっとし、ぞっとしながらも微笑み、
ずっと浸っていたかった。
書かれた声が、イメージされる声ではなく、
本物の声のように聞こえていた。
日常的に使われ、書かれる一文字が抜かれ、
戻され、
また抜かれることで、
こんなにも読むときに揺さぶられるのか。
最終候補に残った作品はどれも毒があったが、
静かなこの作品が一番、体に侵入してきた。
最後の段落で泣きそうになりました。
この作品を読むことができて、うれしいです。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
均質化される社会を、アイロニカルに表現しているように思えたためです。
かけっこの順位付けもダメ、目立つのもダメ、誰もが一番じゃないとダメ…といったくだらない世の中が、桃太郎と桃太郎と桃太郎たちの劇で表されていて。そんなくだらない世の中に染まってしまった(死んだ)人が、危うさに気が付かず
狂ったように拍手をしている狂った姿…というように読み取れる最後のシーンは、どことなく寒気を覚えてしまいました。
※あくまで私見なので、意図されているものとは違うかもしれませんが…
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○選んだ作品:
○選んだ理由:
作品自体の面白さで考えるとどの作品も甲乙つけがたく、とても一つを選ぶことができませんでしたので、映像化との相性を基準とさせていただきました。本作の軽快なテンポ、ユーモアあふれる台詞回し、動的な展開は、映像化によってさらに面白さが増すだろうと思われ、是非見てみたい!と感じました。監督や脚本、役者によって作風がかなり左右される作品だと思うので、映像にした時にどんな仕上がりになるのかも楽しみです。以上の理由より、最終候補作品の中で最も映像化に向いていると感じたので、本作を選ばせていただきました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
遺伝的距離の遠い男女が惹かれあうのは必然である、とする説がある。DNA配合が多様であるほど(異なる人種間など)、病気やウィルスへの耐性を持つ子孫が生まれやすいからだ。とすれば生殖に付随して生ずる“恋愛”は欠けた部分の“補いあい”を求める欲望であり、それは互いの抱える欠損に比例して激しく燃焼する。本作では「雪女」のストーリーを正面から翻訳した技術、そして欠落を補いあう過程(とその困難)を美しいデフォルメで描いている点に惹かれた。種族的には遠い人間と妖怪が恋に落ちることは果たしてあるのだろうか(16年2月期で入江氏の作品を推薦したので、今回は同氏及び自作を除く作品の中から選ばせていただいた)。
■優秀賞受賞者アンケート
○選んだ作品:
○選んだ理由:
発想が良い。不幸な階段がユーモアで救われるのも嬉しい。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
奇をてらわない落ち着いた文章に情景描写、主要人物の二人が今までの環境から抜け出し、人生の仕切り直しを感じさせるラストが良いと思いました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
現代人の危うい傾向を昔話になぞってブラックユーモア溢れる作品にした。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
走れメロスが忠実に現代に再現されている上に、一体どうなるのだろうかと新鮮な気持ちで読み進むことができました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
自身も同じ原作を使用していましたが、文章の巧さと原作の雰囲気をオマージュさせる内容に感動しました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
まず、作中で男の子(ゲン)は母親と父親の言葉に対して声を発して返答していない。まるで母親が母親であるための/父親が父親であるための家庭における「お人形」のようだ。その男の子は、自らの家庭において「息子」としてしか扱われていないのではないか。「息子」以前に「ゲンという名の男の子」という個人である、ということに対して、まるで盲目的な世界で生きているのではないだろうか。ということに思い至り、そしてこの素晴らしい短編は「キノピオ」の二次創作である、それだけで僕は戦慄した。 この作品は、ストーリーと文章とをフルに使ってイメージそのものを叩きつけるような特異な書き方をしているが、ただのイロモノ、思いつきのそれっぽい言葉、意味があるようで意味のない詩を繋げて作ったストーリー、では断じてない。 人形のようだった男の子が、本物の人形になっておじいさんがおじいさんの嘘で伸ばした鼻をドリルのように回転させ、両親の元へ向かう。そこで物語は幕を閉じるが、おそらく復讐が行われるのだろう。人形が歩いたり鼻がドリル回転したりと非現実的ではあるが、家庭から無自覚の抑圧を受けた子供の復讐、というモチーフを読み取ると、一見ナンセンス小説のようでも、特異な世界観の中に普遍的なテーマを孕んでいることがわかる。 という読み方はあくまで、僕が勝手にそう読んだというものに過ぎない。が、もしこの読み方が間違っていたとしても(読み方に間違いも何もないのかも知れないが)僕はこの作品を推すだろう。頭で考えて楽しむこともできるが、それ以前に文体と物語が持った凄み、トリップ感、他ではそうそう味わえない食感、それらを感覚的に咀嚼するだけでも、この作品が凡作ではないと直感で理解できるはずである。この作品が映像になるとき、どういった化学反応を起こすのか、楽しみで仕方がない。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
候補の作品の中で自分として一番ビジュアライズできない作品でした。ショートムービ作成者のイマジネーションとの共創と見てみたいと思いました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
『銀河鉄道の夜』のファンタジー世界をそのままに、現代のエレベーターに蘇らせながら、賢治エッセンスも凝縮したエキスとしてきちんと調味されていて、とても優れたパスティーシュと思います。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
映像になったら1番楽しそうだなと思いました。コミカルなメロスが見てみたいです。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
最終候補に選ばれる前から一読者として面白い作品だと思っていました。私は難しいことは分からないので、難しいことを考えなくても楽しく読めるというのも良かったです。読みながら頭の中で映像化していました。これが5話連続ドラマとかだったら予約して見ます。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
ショートショートならではの実験的な面白さと、この作品を映像化するとどうなるかという期待を込めて。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
おもしろいの一言。読めば、わかります。メロスと現代が不思議とマッチして、おもしろさが加速していきました。超一流のスーパー営業マン、メロスが映像で活躍するところをぜひ見たいです。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
スラップスティックなところが、私の作風にも似てて、楽しめました。