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ある日のこと。
パパもママも居らず不穏な空気が朝から城全体に蔓延していた。
ネエ様は私がいつもシンデレラにやらせていた様に(いじめ方にアレンジを加えつつ)床掃除をやらせた。
ネエ様は巨体を揺らしながらシンデレラに怒声の限りを浴びせ、そして次第にエスカレートしバケツに入った泥水をシンデレラに向かってぶちまけた。その日、両親がいないことがネエ様の自制心を崩壊させていた。その水、泥水はシンデレラの全身を満遍なく濡らした。これにはさすがの私も若干引き気味。
(うぁーやりすぎちゃうの)
シンデレラは滴り落ちる泥水を拭いもせずにそれでも床掃除をよつんばになりながらせっせとこなした。
(ってか普通驚いたり、逃げたり、叫んだりするっしょ。なんで、なんで、そんな何事もなかったように床を拭き続けるのよ、お願いシンデレラ、嫌がって、私達を軽蔑と悪意、憎しみ、貶みの眼差しで睨んで。)
と私は思った。
ネエ様の怒声は止まない。シンデレラはそれでも床から眼を逸らさないでいた。彼女の美しい髪を伝い泥水がしたたり落ちる。そんな姿を見ていると次第に或るひとつの思いが過る。
(今、わかったわ!シンデレラ、あんたはどんなに虐げられても蔑まれても健気に従うお姫様を演じているだけなのね。あんたはただの可哀相なお姫様プレイをしているにすぎないのよ。あんたは充分自分が可愛いことを熟知してる。そりゃそうです先生。実際めっちゃ可愛いですから。ファッション雑誌のカヴァーも難なくこなせるわ。あんたなら。だから私達にどんなに虐げられても、そうやって自分を守り続けられるのね。心の中では私たちを馬鹿にしてるの。不細工ないじわる姉妹。「超終わってんな」って思ってるしょ。絶対思ってる。そうやって精神のバランスを保ってるのねシンデレラ、ねぇそうでしょ!シンデレラ!)