小説

『つんデレラ』笹本佳史(『シンデレラ』)

「シンデレラってさぁー舞踊会って結構好きな感じ?」
「別に」
「あんたも舞踊会にいきたい?」
「別に」
シンデレラはこちらを振り向こうともしない。
「ほんとのほんとのところ、行きたいんでしょ?実際問題。」
「別に」
「嘘!素直になりなよっ!ほんとは行きたいくせにっ!」
「別に」
「もういいわ!私があんたを連れて行ってあげるわっ!でも勘違いしないで、これはあんたの為じゃないからねっ!私自身の問題なの!人としての尊厳の話なの!良いわね?」
「別に」
シンデレラは身動き一つしない。私は両こぶしを固く握りしめ身体を震わせる。信じられないほど顔面が紅潮していくのが自分でもわかった。
「何だよてめー!いじけやがって!人がせっかくよ!連れてってやるつってんのによ!もういい!おめーみたいなモン一生舞踊会にくんじゃねぇーよ!」
私は力の限り扉を強く閉めながら部屋を出た。そしてそのまま廊下にしゃがみこんでわんわんと泣いた。自分でも驚く。
(この涙は何?)
隣に浮遊している冷静なもうひとりの私が考える。
 

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