小説

『つんデレラ』笹本佳史(『シンデレラ』)

「シンデレラ、あなたからもちょっとネエ様に言ってちょうだいよ。」
シンデレラは黙っている。私の言葉を意図的に無視したような態度が垣間見える。
「ねぇ!シンデレラ!」
思わず語気を荒げてしまう。が、ネエ様が二つ目のフライドポテトを食べ終え、我々の間に入る。
「もういいのよ、やめて。シンデレラ早くそのポテト頂戴。私は今ダイエット中なのよ、私もいささか気が立ってるの。早くして頂戴!ダイエットってほんと大変ね。」
シンデレラは三つ目のLLサイズのフライドポテトをネエ様の前に置きながら、うつむき小声で言う。
「・・・ヤセルッテ・・」
ボリューム3。聞こえない。
「えっ!何?なんて言ってる?聞こえない!はっきりしゃべって!」
私はさらに語気を荒げ、シンデレラの肩のあたりを軽くこずく。
シンデレラは少しよろめいたが立て直しそして顔をあげ、呼吸を整えてから私とネエ様の眼を交互に見ながら静かに話し始めた。
「痩せるって簡単なことですよ。ネエ様。ネエ様の摂生の努力恐れ入りますが、ダイエットなんて摂取カロリーと消費カロリーの差でしかないのです。数ヶ月我慢すれば誰だって痩せます。でもほんとに難しいのはその体型を維持することです。現在書店にはダイエット成功メソッドみたいな本が棚にこぞって並んでいるようですが、実は単なるその場しのぎでしかないのです。痩せるよりも維持する為の方法を記すべきです。しかしそれは並大抵のことではできません。自分の身体を一定に保ち続けるってことは生活習慣はもとより、その人の人生観に関わってくることだと思いますから。だからネエ様がもし一時的に痩せることができたとしても今後さらなる困難が待ち受けています。豚の自分への呪縛にしばられながら死ぬまで生きるのです。」
 

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