小説

『つんデレラ』笹本佳史(『シンデレラ』)

「ネエ様ダイエットもよろしいですけど、こうもお城の中にこもっていては気分も晴れませんことよ。今日私と一緒にお散歩にでもでかけませんこと?」
そういうとネエ様はしばらくの間、額を伏せ、両こぶしを硬く握り締めながら全身をわらわらと震えさせ真っ赤な顔を私に向け言った。
「いや!散歩は!」
「まぁそんなこと仰らずにちょっとした気分てんか」
という私の言葉をネエ様は遮る。
「サマンサのことを思い出すから!散歩はいや!あなたは私にあの辛い思い出を思い出させたいのね。そう。わかったわ。よーくわかった。アイムシュア。あなたはそんなに姉のことが嫌いなのね。よーくわかった。」
ネエ様の息遣いが獣のように荒くなり、続けてまくしたてる。
「あなたの魂胆、今わかったわ。よーくわかったわ。私がこんなにも醜い姿になったのを世間に見せびらかしてあなたはひとり優越感に浸りたいの。同じ姉妹なのに、あなたはいつからそんな卑しい人間になってしまったの!あなたもシンデレラと同じね!」
「いえいえいえ、そんなつもりはないのです、、それは誤解というものですわ。」
私が焦りながら否定しているところに、シンデレラが食堂の扉をあけ、三つ目のLLサイズのフライドポテトをもってやってきた。私は思わぬ助け舟に表情を明るくしてシンデレラに問うた。
「シンデレラいいところに来たわ。ねぇ、ネエ様をお散歩にお誘いしたんだけどネエ様ったら頑なに拒むのよ。ネエ様にも困りものよね。」
と大げさに言ってみた。
 

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