小説

『つんデレラ』笹本佳史(『シンデレラ』)

(あっ、やっぱそういう感じなのね。まぁそんな態度になっちゃうのはわかりますよ。充分承知しております。でも、でも、でもあなたは可哀相なお姫様をただ演じてるだけに過ぎないの。ただの「可哀相な私プレイ」なの。)
私は心の中で叫んでいた。反面こうも思った。
(じゃ、じゃ、じゃ私はなに、、私は、意地悪な脇役のお姫様プレイ中?そんなの嫌!ほんとの私はこんなじゃない!)
私はそんな本心を悟られないよう(悟られるはずないのだが、)なかばヤケクソ気味に滑舌よくタカラジェンヌのようなオーバーアクションで、
「ほんとの私ってこんなじゃないよぉーー!昔はさぁーー!ネエ様もやさしくて!あんなじゃなかったのよー!ほんとよーー!勿論私もよっーー!レリゴーー」
と一応歌ってみた。シンデレラは深いため息をひとつして足元にある吸殻を手に取り私に向かって放り投げた。超冷めてる。おどけてみせた私が馬鹿のようだ。そしてシンデレラは再度深いため息をひとつしながら。
「つーか、おめぇらがやってきたことってさぁ、本当の自分とか嘘の自分とか昔の自分とかカンケーなくない?今までどんな辛い思いを私がしてきたかわかってんの」
シンデレラの両頬にはどす黒い痣があり、右目に眼帯をしているがその上からでもひどく腫れてるのがみてとれる。おまけに前歯もなかった。
私はひどく驚いた。その悲壮な姿にではなく、彼女は静かに涙をながしながら針のようなまっすぐな眼差しでこちらを見ていたからだ。
そこには「可哀想な私プレイ」をやめてしまった「生身のただの少女」が居た。
ゲームオーバー。
 

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