小説

『つんデレラ』笹本佳史(『シンデレラ』)

「えー、明日と言われますと随分と急なお話でありますね。私どももできる限り尽力をつくしておりますが、さすがに明日シンデレラ様のサイズにあったドレスを用意することはかなり困難であるかと。」
と「ドレスリース110番」は申し訳なさそうに話す。
「そこをなんとかならないの?」
私が詰め寄る。
「そうですねぇ、、あっ!あっ!ひとつご用意できるのがあるかもしれません。大丈夫かもしれません。あっ!あっ!しかしながらあさってに予約がはいっておりますので、遅くても明日深夜零時にはご返却いただくという形になりますが、よろしかったぁでしょうか?」
「それでいいわ。」
私達はドレスと靴をもってまた駆け出す。次に向かったのは「Faceはうす」という仮面舞踊会などで使用される仮面を扱った店。
(思ったより高額ね。)
私はシンデレラに目配せをした。彼女は軽く相槌をし店員と世間話を始める。その隙をみてガラスの靴を入れた紙袋に適当な仮面を手に取りこっそりといれる。
足早に店を出て次に馬車前の駐輪所に向かう。そして鍵のかかっていない自転車を探す。ひとつだけ鍵をかけ忘れたマウンテンバイクがあった。これを盗みだし簡易ではあるが馬車とし、そのままニケツで家路を急いだ。
「シンデレラ、これで完璧ね。明日あんたも舞踊会に行けるわよ。でも仮面着用必至よ。それだけは忘れないで。ママやネエ様にばれちゃうと面倒だから。あとドレスは零時には返却しないといけないから気を付けて。行き帰りはこのチャリだけどポリの職質には要注意よ。あと、あと、ガラスの靴は慌ててたから、あんたにはちょっと大きいかもしれないけど途中で落っことさないでね。」
背中にシンデレラの息吹と夕日を受けながら私は立ちこぎで坂を登った。
 

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