○選んだ作品:
『欲しいの因果』相原ふじ(『星の銀貨』)
○選んだ理由:
幼い頃の似たような経験を思い出し、気持ちが揺さぶられたからです。フードコートのレジまで行き、店員さんに『ダックさんシールをください』と言うだけのことが、4歳のわたしにはなぜかどうしてもできなかった。いまでも後悔しています。『ダックさん』って、なんだったんでしょう……? もう一生知ることはできないんだろうなぁ。そしてわたし、20年以上経ったいまもなお、「欲しい」と口に出して伝えることには勇気がいります。
ブックショートアワード2016年3月期の優秀賞受賞者の皆様に、ご自分以外の作品のなかで最も面白いと思った作品をアンケートで答えていただきしました!
(順不同 / ご返信いただいた方のみ記載)
○選んだ作品:
○選んだ理由:
幼い頃の似たような経験を思い出し、気持ちが揺さぶられたからです。フードコートのレジまで行き、店員さんに『ダックさんシールをください』と言うだけのことが、4歳のわたしにはなぜかどうしてもできなかった。いまでも後悔しています。『ダックさん』って、なんだったんでしょう……? もう一生知ることはできないんだろうなぁ。そしてわたし、20年以上経ったいまもなお、「欲しい」と口に出して伝えることには勇気がいります。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
読みやすい文章の書き方、余韻の残し方など、話自体の面白さもさることながら見習いたいことの多い作品だと思いました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
エレベーターに入れ替わりに乗ってくる人々の描写や対話が、『銀河鉄道の夜』の文章を彷彿とさせ、心地よく読み進めることが出来ました。淡々としながらも、何かが静かに心に伸びてくるような、人々と文章の絶妙な距離感がお上手です。また、そこで出会った人々という点が、終盤しっかりと線で結ばれるところの構成もお見事でした。「テツ」と語り手の学生時代の関係も、こういうの分かるな、と思えるエピソードで、さりげなくもお互いへの押し付けがましくない思いやりが感じ取れて、とても好感が持てました。ラストの止め方も、これから下っていくのか、それとも天国へついてしまったのか、読者に委ねるところも良かったです。ここで、それまで何度も繰り返してきた「ポォォン」という擬音が生きてきて、こういう伏線の使い方もあるのだなと、大変勉強になりました。今回一作しか挙げられませんでしたが、その他「夢見るピアノ」や「ゴク・り」など、読めてよかったと思える作品がたくさんありました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
作品を自動翻訳するという、ある種の作家殺しを作品(便宜上作品と呼ぶ)の中で行うという発想が興味深かった。自動翻訳が繰り返された作品は文学たり得るのだろうか。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
温度、空気、音、景観、それらが差し障りなくイメージできたので子供目線からの緊張感が生まれ、最後の怪談話を助長したように思う。また、保守的な大人たちと自由を欲する若者、浜荷役の女とスクリーンに映る大女優。作中に書かれた『義務と結束』という言葉に縛られた若者たちの抵抗は今の時代と異なり、専心と好奇心で溢れている。試写に参加した者にはその後、激動の時代を生き抜くマレーネ・ディートリッヒが良くも悪くも思い出として絡みつくのではないかと思った。一回目と二回目では読後感が変化したのが魅力的だったので本作品を選びました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
設定は奇抜ですが、巧みな描写のおかげで優しくて可愛らしい林檎人間の姿が目に浮かぶようでした。語り手の「私」と共に林檎人間の健気さに癒され、ピンチにハラハラし、読んだ後には爽やかな気持ちになれる、楽しい作品でした。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
引きこもりニートを部屋からだすために家族が奮闘する様子を大きなかぶ調に描くというアイディアがすごく面白かったです。何より文章から伝わる作者さんのノリノリな感じが読者をクスリとさせたと思います。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
男の想いが叶い『窓辺の夫婦』になれたというラストにはほろりとさせられました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
古典落語をノベライズするチャレンジが新鮮で面白いと感じた。その上で、原作にはないオリジナルのオチをこしらえており、独立した「落語小説」として楽しめる内容だったため。ただし映像化するという視点で見ると、やや最後の部分がうまく表現しきれるのか自分には想像できなかった。映像作品として見てみたいという意味では、「窓辺の夫婦」「忘れえぬ訪問者」「白い銀河」「走れ土左衛門」などが印象に残った。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
饒舌な語り口に、ある程度の物語の破綻をもろともしない熱量、思考と地続きに盛んに移ろいゆく発語。読んでいるというより、読まされているような感覚に陥りました。次作もぜひ読まされてみたい、と思いました。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
エロスの向こうに主人公の自己嫌悪と矛盾、欲望と葛藤、彼女の透明さと不気味さがあり、心のやわなところを掻き立てられた。
○選んだ作品:
○選んだ理由:
最も面白く読まさせて頂きましたので、坂本悠花里さんの『オフィスレィディ』を推薦させて頂きます。素敵な文章を書かれる方はたくさんいらっしゃいましたが、読みやすいすっきりとした文章を使いつつ、印象に残る一文を残していると感じられたのがこの作品でした。主人公の「私」のモヤモヤとした心情や、感性あふれる視点がよく描かれていてとても興味深かったです。私には書けないタイプの物語だなと思いました。