『めぐる記憶』
間詰ちひろ
職業体験の一環として、小学生から美容師の仕事について質問を受けることになった藤野圭太。普段から利用してくれていて、4年1組の担任である北浦美咲に、なぜ美容師になったのかと質問された藤野は「罪滅ぼし」だと答える。
『私のささやかで大切な変身』
真銅ひろし
私はよく髪を染める。ピンクだったり、金色だったり、パープルだったり。そしてそれには理由がちゃんとある。それは仕事で落ち込んだ時に美容師さんから「じゃあ派手な髪色にでも染めてみますか?」と言われた事がきっかけだった。
『オアシス』
森井いち子
私は二人の男の子を育てているママ。毎日子育てに一生懸命だけど、自分のことは常に後回しになっている。ある日、子どもを連れて少し離れたところにある児童館に行こうとして道に迷ってしまう。カフェと間違えて覗いたお店は美容室で、私は久しぶりにヘアカットをしてもらう。
『私かもしれない』
柿沼雅美
上京後、オンライン授業が主な生活で鬱々としていた。部屋に友達が来たことは一度もない。知っているのは、小さな画像やアプリで加工された姿。もうこのままでいいような気さえしてくる。ある日、同じ授業を受けている真利亜から「会わない?」と言われ、自信の無さを伝えると、美容院に誘われた。
『うわさの美容室』
吉岡幸一
「恋が成就する」と、SNS上で私の経営する美容室が噂になり賑わい始めました。静香さんもそんな噂を信じてきたお客さんのひとりでした。静香さんは妊娠をしていましたが、そのことをまだ結婚をしていない彼に打ち明けていませんでした。その後の静香さんを私は美容師という立場で見守るのでした。
『さよならメドゥーサ』
微塵粉
女子中学生真中雛美は孤高であり、淑やかであったが色々とニブい。その佇まいが周囲からの羨望と、嫉妬と、隔たりを生み出していることに自覚がない。同じクラスの男子から与えられた妙な称号が、彼女を大きく変える。
『ガーベラ』
ウダ・タマキ
美容師の奈々は月に一度、高校時代の先輩だった結衣の髪をカットしている。ある日、結衣から急性白血病になったと知らされた。抗がん剤治療を受けるため、しばらく店に来られないそうだ。数か月後、結衣から連絡があった。何気ないやり取りの中で、結衣は医療用ウィッグのカットを奈々にお願いした。
『パワフルなおかつストロング』
結城紫雄
失恋のショックから、衝動的に美容室に飛び込み「とある映画の主人公と同じ髪型にしてほしい」とリクエストする“わたし”。彼女の希望は『エイリアン3』のシガニー・ウィーバーのヘアスタイル、つまり「丸刈り」だった。
『ジョウさん髪切ってほしいんだ』
もりまりこ
むかし翔の家族が離婚するまで週末になると遊びに来ていたジョウさんと電車の中でばったり会った。ジョウさんは美容師だった。懐かしかった翔はジョウさんに久しぶりに髪切ってくれないかなって言ってみる。空っぽの美容室に何年振りかに響くハサミの音がなつかしくて切なかった。