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               国際短編映画祭につながる「ショートフィルムの原案」公募・創作プロジェクト 奇想天外短編映画 BOOK SHORTS

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『私かもしれない』柿沼雅美

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「会わない?」
 大学のオンライン授業のあと、真利亜からラインが来た。んー、と迷いながら返信をしないでいると、通話しない? と送られてきて、それにはすぐにいいよと返事をした。
 スピーカーに切り替えると一人暮らしのワンルームに真利亜の声が響く。自分以外の声がすると部屋の壁がびっくりしたみたいに静まりかえる気がする。上京してから友達が遊びに来た事は一度もない。
「さっきごめん急に誘って」
「ううん、いいの。ちがくて。画面でしか顔見てないじゃん?実際見られたらなんか恥ずかしいなと思って」
「え、なんで?」
「いつも通話だけだし。インスタとかの写真と全然違うし」
「え、そんなことないよ。授業中も真剣な顔超いいと思うけど」
「それは化粧してるし、何より30人くらいいるから自分の映ってるとこ小さいじゃん」
「あ、あれは助かるよね」
 スピーカーの向こうで、真利亜がしゃべりながら何かを飲んでいる音がする。
「実際会ったらがっかりされちゃう気がして。せっかくメイクとか服とか色々話せて楽しいのに、実際会ったらそんなの気にするレベルじゃなくね?みたいになったらいやだし…」
「えー、そんなことないって」
 そんなことあるのだ。実際に春のオンラインのサークル勧誘で、先輩の男子に、なんか雰囲気ちがうね、とがっかりしたような顔をされた。ただフィルターがついてない画面になっただけなのに。画面でそれなら実際会ったら何言われるかたまったもんじゃないと思う。
 そもそも、もともと都会住みの人たちと地方から来た私みたいな子では、スタートラインが違いすぎる。よく考えたら名前の字だけで差を感じる。マリアって、おしゃれすぎないか。
 そんなことがあって、引きこもり状態であって、とにかく鬱々とししている。テレビに出てくるような女子大生や20代のタレントさんとは世界が違うのだ。
「でもさ、インスタとかと現実って違うからいんじゃない?」
「どゆこと?」
「インスタは理想で、現実は現実だし」
「そうかな」
「そうだよ。どちらかっていうと、そういうのちゃんと分かってない大人のほうがやばいと思うけど」
「そうなの?」
「そりゃそうだよ!たとえばさ、こないだニュースになってたけど、綺麗な女性でネイルも毎週変えてて、おしゃれなインテリアに高そうなバッグとか、ハイヒール履いた足斜めに揃えてワイン持ってる写真とかさ、すごいって思うけど、実は横領とか子供虐待とか」
「なんかネットにも上がってたね」
 そういえば真利亜とレポートの相談とかしている時、ニュースの話題が出てくることが多いなと思う。留学経験があるって聞いたことあるし、頭がいいのがなんとなく分かる。
「あとはほら、うちらはやってないけどフェースブックのほうに、今日は仕事で○○~、とか、イクメンとか、何でもない日に家族にサプライズプレゼントとか、そういうの、家でやればよくない?みたいのあるじゃん」
「あはは、あるね」
「大人だって本当かどうか分からないものばっか載せてるんだから、うちらの見た目の加工くらい何?って感じしない?」
 そう言われてみるとそんな気もしてくる。
「そうかも」

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