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『私かもしれない』柿沼雅美

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「でしょ?それにぶっちゃけ、私だって全然違うし」
「うっそだ」
「ほんとほんと。悪いけど肩幅がもう違うからね、2まわりくらい縮小して撮れてる」
「あ、腕とか」
「そうそう!だって普通にアプリで撮るだけで顔も体も細く映るんだもん。私たちのせいじゃなくない?」
「たしかに、あはは、私たちのせいではない」
「だから、いいんだって、気にしないで」
 うーん、と少し考えて聞いてみる。
「じゃあさ、目が3分の1くらいの大きさでも友達できる?」
「全然できるよ。ってかこんだけしゃべって一緒に授業受けてるんだから友達じゃん」
「じゃあさ、体重が50キロ超えてても、デブじゃんとか思わない?」
「思わないし、私だって48とかだから変わらないし。万が一デブいと思っても言わない」
それは言わないで、と笑ってしまいそうになる。
「じゃあ、メイクとか合ってなかったり、もう全体的に田舎者でも恥ずかしくない?」
「全然だって。っていうかそんなに気にするほど?」
「うん。東京出てくる前とかもそうだったんだけど、服はミニは足太いから無理だし、ロングはおばさんみたいになるし、髪も癖がすごくて、クッションファンデとか使ったら顔だけ白いとか言われるし、赤系のアイシャドウは腫れて見えるし、眉毛は左右対称に生えてないし、直さなきゃならないところはキリがないよ」
「まじか」
 真利亜がそのあと何も言わないので、めんどくさい奴って思われてるだろうな、と黙る。
「だから…」
 会うのは自信がない、と言いかけると真利亜が低いトーンでさえぎった。
「それって、全部自分でやらなきゃだめって感じ?」
「え?」
「なんで自分で全部どうにかしようとするのかなって。今っぽいのが合わないんだったら似合うのがほかにあるんだろうし。私はさすがにそこまでのセンスないけど」
 いやあるだろ、と思いながら、なるほど、とも思った。友達や家族に、かわいくなりたいとかコンプレックスをどうにかしてもらうのは気が引けるけど、他人なら大丈夫な気がした。なんで思いつかなかったんだと思うと同時に、お店も何も知らないんだ、と気づいた。
「どこでどうすればいいか分からん」
「とりあえず美容院行かない?」
「高くない?」
 レストランのバイトのシフトが減らされていてお金に余裕がない。床に転がしていたバッグを引っ張り寄せて財布を開いた。今月使えるのは超頑張って1万5千円くらいだ。
「大丈夫、大学の近くで探してみようよ。服も見よ。んで、入れないキャンバスの門で愚痴でも言い合おう」
 楽しそう!と思った。東京に慣れている友達と買い物をしたり、カフェでいっぱい話したりするのをずっとしたかった。
「絶対こいつダサいと思うと思うけど、私も真利亜ちゃんにちゃんと会いたいし」
「じゃあ決まりね!急だけど明日は? 土日より平日のが密じゃないし、オンライン授業何限まで?」
「えっとね、朝イチからだけど終わるのは3限かな?」
「おっけー、私も3限終わりだから待ち合わせしようよ、渋谷でいい?混んでないお店探しとくから」
 全部が真利亜のペースだけど、それが楽しく思えてくる。
「うー、おねがいします」
「別に気合入れたおしゃれとかしないでいいからね」
 そう言う真利亜に、なんでやろうとしてること分かるの、と苦笑いして通話を切った。
 クローゼットを開けると、ネットで見たらかわいいのに買って着てみたらかわいく見えなくなった服が垂れ下がっていた。

 センタープレスのフレアっぽいデニム色のパンツ、ロゴトレーナー、ナイキのシューズ、肩までの外ハネの髪の毛、と言われた通りの人がハチ公前に立っていた。ハチ公前以外よく分からないという私に合わせて、ハチ公の目の前に立ってるわ、とラインをくれていた。小銭が入りそうな半透明のウエストポーチをベルトのように巻いていて、オーバーサイズのトレーナーがかっこいい。
 「真利亜ちゃん!」

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