『記憶の糸を切る』
秋助
水瀬は小学生のころ、美容師のお姉さんに「髪には記憶が宿っているのよ」と聞いた。花の髪留めをもらったのを最後に、いつからかお姉さんと会うことがなくなった水瀬は、高校で弟の伊坂と出会う。久しぶりに会いたいとお願いする水瀬をよそに、伊坂は「姉は若年性アルツハイマーで入院中だ」と告げる。
『この髪形にしてください』
中島直俊
町の小さな美容院にお客としてやってきた男子中学生がオーダーした髪形はド派手なモヒカンだった。大人しそうな風貌の少年には、まったく似合わないモヒカンの注文に、店長の大島は難色をしめす。なぜ少年はモヒカンにしたいのか? もしやイジメ? 大島は悩み、そして少年の本当の願いを知る。
『魔法の国』
ジョーク松山
両親のいない葵と鈴は七つ歳が離れた姉妹。葵は中学卒業後すぐに美容室で見習いとして働き始め美容師免許を取得、二人は叔母宅を出て二人暮らしを始める。県立高校に合格した鈴はお祝いに葵が働く美容室に産まれて初めて行くことになるのだが、そこは鈴にとって魔法の国だった。
『キリトリセン』
内野紅
毎月通う美容室「ロマレア」に今日もやってきた由宇。お目当ては安定した腕前と程よい距離感でいつも癒しをくれる伊藤さんだ。三十歳、妊娠中、未婚という肩書きに息苦しさや不安を抱えた由宇は、施術中も終始物思いに沈む。過去に押しつぶされそうな彼女を、伊藤さんはどのように救い出すのか。
『ハサミが少女の人生を変えた日』
高木達也
髪をロングヘアにしていた少女には理由があった。少女の悲痛な毎日を、ショートヘアにして大きく人生が変わった日のリアルなエピソードです。
『髪色』
秋吉春伽
大学三年の冬、就活で髪を黒く染めることに抵抗があった美樹(みき)は、本腰を入れて就活に取り組めていなかった。美樹は行きつけの美容室で、担当してくれる柏さんに黒髪にすることの悩みを打ち明ける。その結果、美樹は就活の決心を固め、髪色をラベンダー色に変えた。
『春を告ぐシャンプ―』
徳原新月
漫然と生きてきた美容師の主人公は、東日本大震災のあと、シャンプーボランティアに志願する。泥や雪に濡れたのに一か月もお風呂に入れない被災者に洗髪を施すボランティアだ。家も夫もなくした千鶴さん、雪の降る川で洗髪した小林さん、親をなくした優紀の話を聞きながら、主人公は人生を見つめ直す。
『春の魔法』
MAGAO
季節は春。高校生になった春香は、メイクやファッションを通して変わっていく周囲に焦りを感じていた。ひとまず女子高生らしいことをしてみようと試みるも、友人達との落差にだんだんと不安が募っていくそんな春香が出会ったのは、カットモデルを募集するとある美容室だった。
『もねのこと』
室市雅則
最後くらい小綺麗にしておきたいと、たまたま目についた美容室に入った。二席しかない小さな美容室の一席には『予約席』の札が置かれていた。