HOPPY HAPPY AWARD12月期にご応募いただいた作品の中から選ばれた優秀作品34作品です。
『侵入社員』
円堂句遠
本物が良い。偽物が悪い。そんな、単純なことなのだろうか。「とりあえず、生で」もなくなって、「とりあえず、サラリーマンで」もなくなって。偽物と本物が入り混じり、また、簡単に入れ替わって行く。きっとこれからも。それぞれが自分は本物だと思い込みながら。二十二歳、若者が会社に入社する話。
『いつか指先で光る』
森な子
まゆさんが姿を消した時、硬貨のようなものが家の前に落ちていた。拾い上げるとそれは、お酒の王冠だった。のらりくらりと暮らし、いつも何かを隠すように所在なさげに笑うまゆさんに惹かれる男子高校生、湊は、その王冠をいつまでも捨てられずにいた。
『夢のプラットホーム』
福川永介
酒屋を営む父親と、ふたりで暮らす高校生の和真(かずま)。和真は、将来の仕事への不安で、日々頭を悩ませていた。ある日、父親が腰を痛めてしまい、和真が酒の配達をすることに。そこで出会った人たちからの言葉で、和真は「仕事への意識」が変わっていく。そしてついに……
『バックホーム!』
西山啓輔
総合商社に勤める早崎は順調なキャリアを積んできたが、思わぬ事件により大きな挫折を経験する。東京近郊の居酒屋で打ちひしがれる早崎に偶然声をかけたのは、高校時代の親友・増井だった。二人は、野球部で共に甲子園を目指した仲であった。
『親父達の馴れ初め』
真間タケ
親父の四十九日の法要の前日、準備で忙しい妻。役に立たない私は、孫を連れ銭湯へ。その帰りに寄った行きつけの飲み屋で、亡くなった親父とお袋、息子と嫁の馴れ初め話を知る。そこには、ホッピーが、繋いだ恋の思い出が、あったのだ。
『詰むや詰まざるや』
乃木正彦
「今日は、五本二百円だよー!」と一杯飲み屋の主人が店頭で鳥を焼きながら店内に向かって叫ぶ。風向き次第ではその煙で店はもんもんとする。肌黒でアフロヘアの大将は上下黒のジャージでいつも焼くときにはゴーグルをつけている。
『硝子の時間』
もりまりこ
むかしバイトしていた居酒屋<ととちゃん>が、もう店を閉じてしまうという。よかったら来てよって大将の芝浜さんの懐かしい声に誘われてわたしは久しぶりに訪れると。そこはむかしのままの時間が紡がれていた。もう逢えないと思ってた人達が次々にやってきた。ホッピーをこよなく愛するみんながそこにいた。
『家族での初めての飲み会』
坪内裕朗
父の還暦祝いとして、家族全員で初めて居酒屋に行くことになった。家族と飲むことに不安を感じていた僕だったが、飲み会を通じ、幼少期の思い出や今の家族と向き合うことで、家族やお酒に対する気持ちが変化していくのだった。
『二度目のクリスマス』
朝倉みず
⼩学校で過ごす最後のクリスマスの⽇、担任の先⽣がある提案をする。それは、未来の⾃分へのプレゼントを⽤意し、成⼈を迎えた年のクリスマスにそれを開封するという提案だった。私は当時好きだった男⼦に⼿紙を書き、ホッピーの瓶にそれを詰める。そして九年後の同窓会でその⼿紙を開いた時…