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『親父達の馴れ初め』真間タケ

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 妻と嫁は、午前中から、ずっと忙しそうに家の中を動き回っている。私は、妻から
「今日のお昼は、コンビニで済ませちゃうから、お父さん、何か適当に買ってきて。」
 と、頼まれた。
 自分達夫婦、嫁と孫のカナとヨシキの昼飯を、コンビニに買出しに行った。普段、それ程コンビニに行くこともない私は、コンビニの弁当や総菜のラインナップの多さに驚いた。嫁や孫の喜びそうな物を選ぶと、買い物かごは、直ぐに一杯になってしまった。足りないよりは、いいだろうと思いレジに向かう。家の中が、バタバタしているので、弁当類は、全て温めてもらった。私は、ドサッとリビングのテーブルの上に買い物袋を置いた。その袋の中身を妻がチェックしている。
「あら、わざわざ、温めてもらったの。バラバラに食べるんだから、食べる人が、その都度、温めればいいのに。」
「…。」
「それにしても、随分と買ってきたわね。食べ切れないじゃないの。おにぎりとサンドイッチ位で良かったのに。」
 私のする事は全てお気に召さないらしく、ブツブツと小言を呟く。そのくせ、家事の合間に、自分だけ
「あー、もう、お父さんが、デザートなんか買ってくるから、食べちゃうじゃない。また、太っちゃうわ。」
 と、大文句をたれながら、甘い菓子を頬張っている。
「それは、孫のおやつに買ってきたんだ。」
 と、言い返したい所をグッと堪え、無用な争いを避けるのが、賢明な夫である。
 女性陣の様子を見て、私も何か手伝いたいとも思うのだが、声を掛けても、返って面倒臭そうな顔をされそうなので、大人しく趣味の釣り竿の手入れをしていた。私の前を通る妻が、その釣り竿の先に引っかかる。「何故、私が竿を伸ばしている先をわざわざ歩くのか。」と、本当に不思議でたまらない。3回目に、妻が、釣り竿に引っかかった時、
「もう、あんた達ったら、邪魔でしょうがないわ。お風呂でも、行って来て頂戴。」
 そう言うと、忌々しそうに引き出しからタオルを2本取り出した。
「はい、夕方6時には、ご飯にするから、それまでには帰って来てね。」
 タオルを渡された私に、選択の余地は無い。もう一人の「あんた達」である孫のヨシキに声をかける。
「おい、ヨシキ、大きなお風呂行くよ。」
「わーい。大きなお風呂。やったー。」
 リビングで盛大に線路を広げて、寝っ転がりながら電車を動かしていたヨシキが、ムクッと起き上がり、嬉しそうに飛び跳ねた。
「カナも、一緒に行くかい?」
 私は、小学校3年生になった孫娘に声を掛けてみた。これでも、一応、彼女に気を使ったつもりでいたのだ。
「ダメよ。条例で、私は、もう男湯に入ってはダメなのよ。それに、男湯なんてキモイし。」
と、ケンモホロロである。本当に、女性の扱いは、難しいものである。

 私は、ヨシキを連れ、近くの銭湯へ向かった。

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