「私の名はマーリン。魔法使いです」
マーリン?
マーリンって、あの有名なマーリンか?
「ほう、私のことをご存知で」
知ってるもなにも、この国でマーリンを知らない者などあろうか。
ユーサー王に仕えた優秀なブレーンで、巨人を使役してストーンヘンジを作ったともいわれる偉大な魔法使いだ。
本当にマーリンなのか?
「ユーサー王のお世継ぎに疑われるとは・・・悲しいことです」
・・・!
なぜ、余がユーサー王の血を受けていることを知っている!?
余だって、父上と兄上の話をこっそり盗み聞いて知っているだけなのに。
本当にマーリンなのか?
「だから、そう申しておりますのに。先ほどから王位を継ぎたくないばかりに、つまらん策を弄しているようですが・・・」
バレていたか、さすがはマーリン。
「あのですね、アーサー様、そんなにジタバタしても無駄というものですよ」
なんだと、貴様、誰に向かって口をきいておるのだ!
余は名君の素養たっぷりの、いとも賢い・・・。
「だからですよ。あなたは名君の素養を父君からたっぷりと受け継いでおられる。あなたは自分のプライドを傷つけられることに耐えられない。いくら知能派を気取っても、あなたの体にはゴリゴリの武闘派で名誉を重んずる騎士王の血が流れているのです」
む、その指摘、ちょっと刺さった。
余って、本来はキレやすいんだよなぁ。
それを抑え込むために、冷笑的に生きてきた感がなきにしもあらず。
「でしょう?だから、あなたは必ずこの聖剣を抜いてしまう。名誉を守るために・・・」
それだけ言うと、マーリンは群衆をかき分けて去って行った。
なんか、あーやって断言されると逆らいたくなっちゃうんだよね。
余は誰の指図も受けないからさ。
誰かに支配されることを拒否するのよ、王の血が。
こしゃくな魔法使いめ。
ならば余は絶対に、絶対にこの剣を引き抜かないことを誓おう!
騎士アーサーの名にかけて!