小説

『シャボン玉』伊藤円(童謡『シャボン玉』)

 とはいえゲームばかりではなく、時には出歩くこともあった。祖母は通院以外の外出を滅多にせず、生活必需品の買い物なども専ら母に任せているようだったが、母と、祖母と、僕と、三人暇を持て余している時などは、近所の百貨店に行った。そして、そこでもゲームをした。ゲームコーナーのクレーンゲームや、メダルゲームだった。とりわけ母がその手のゲームを好んで、僕は母と夢中になって丸いボタンを連打した。祖母も時々はやったが、パズルゲームのようには得意ではないらしく、僕に小銭を渡す役目を担っていた。獲得したお菓子は殆ど僕が食べた。ぬいぐるみやフィギュアは、祖母の部屋の窓際に飾った。
殆どの時間は祖母の部屋で過ごしたが、僕も子供だ、身体を動かして遊びたい時が当然あって、そんな時は一人、アパートの目前にある公園に行った。その公園は広く、遊具も豊富で、遊び道具など一つも持っていなくても十分に楽しめた。また、近所中の子供が遊びにくるから、まるで寂しくなかった。毎日、毎日、別の子供と遊んだ。でも不思議と友達にはならなかった。祖母の家に招き入れることもしなかった。ヨソとウチ、僕はそんな区分が明確だった。そのためか変質者にどうこうという事件もなかった。その場所で信頼できるのは、母と、祖母だけだった。そんな意識が見えていたのかどうか、僕が一人公園に行く時、母も、祖母も、止めなかった。ただ祖母は、夏にはタオルを持たせて、冬にはマフラーを巻いてくれた。僕に関しての小物は祖母の手作りが多く、新しいセーターなどが下ろされるたび、僕はとても嬉しかった。
 そして、時々、祖母も僕と二人きり外に出てくれる時があった。
 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13