8月期優秀作品発表
全文公開中
SOLARE AWARD8月期にご応募いただいた作品の中から選ばれた優秀作品13作品です。
『そこへ行く』
室市雅則
仕事を辞めた男は古本屋で一冊の本を購入した。その本の奥付には、以前にこの本を手にした主がメモをした駅名が書かれていた。時間ばかりがある男は、そこへ向けて旅立つ。
『雨の日に』
真銅ひろし
ある土砂降りの雨の日、ホテルに併設されたBARの店長は憂鬱な一日を過ごしていた。理由は妻と離婚の危機に陥っているから。そしてお店にはもう一人憂鬱な男性がいた。来ないと分かっているのに好きな女性を待ち続ける男性。二人は何の解決策も見つけられないまま時間だけが過ぎて行った。
『いつかの森を今歩く』
森な子
深い森を、美しい女性と歩く夢をよく見る。幽霊が憑いているかもしれないと訝しみ、訪れた海の見える美しい鎌倉のお寺で、住職から「何かとても執着の強いものが憑いている」と告げられた“私”は、その繋がりを絶つために過去の記憶をたどることになる。
『ファニーホテル』
南りり
東京で就職し、孤独な日々を送っていたリカに高校時代の大親友から一通の手紙が届く。それは、「ファニーホテル」への招待券。日常と非日常が混じる空間で、誰もが自分じゃない自分になり、本当の自分を見せていく。切なくも温かい、心の触れ合いの物語。
『高校生ホテル』
太田純平
俺は今「高校生ホテル」で働いている。一体何が「高校生」なのかというと、働いているスタッフが全員高校生なのである。しかし学校の授業の一環として働いているから給料は発生しない。やる気の出ない俺はテキトーに仕事をするが、客にクレームを入れられたせいで、先生から留年を言い渡される。
『ちじょうのもつれ』
ノリ・ケンゾウ
たとえばこれからの長い結婚生活の中で、私と夫との間の中で、俗にいう痴情のもつれが原因による別れは、あのような男を人生の伴侶として選択した以上いつ訪れてもおかしくないと思って心構えをしていたけれど、まさかその彼との別れが、「地上のもつれ」によって引き起こされるとは思わなかった。
『掲示板ホテル』
沖原夕
「私」は恋人からも振られ、親友からも絶交され、町をさまよっている道中、一軒のホテルを見つける。優しいコンシェルジュに誘われて泊まることになった「私」だが、ホテル内の連絡手段はロビーにある大掲示板のみ。寂しさを抱える「私」は、ホテルの出会いで自身と他人の繋がりを考えていく。
『修也会へようこそ』
中村ゆい
「気が向いたら、このアドレスに連絡して」。彼氏だった修也と同棲していた部屋を出ていく間際、理紗は彼から知らない女性の連絡先を渡される。女性の正体は修也の高校時代の彼女。好奇心に駆られて連絡すると、修也の元カノたちの集まりに呼び出されてしまう。彼女たちの不思議な女子会へようこそ!
『新緑の頃に』
ウダ・タマキ
白いワンピースに大きなピンクのリボンが付いたストローハット。淡いピンクのキャリーバッグという装いで一人旅に出た葉山伊織が出会ったのは、出で立ちがそっくりな佐山詩織だった。彼女もまた一人旅でここへやって来ていた。それぞれの一人旅に出た理由から意外な事実が判明するのであった。