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『高校生ホテル』太田純平

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「1」

 客がフロントにやって来るなり、隣の猛牛がビシッと背筋を伸ばした。彼の制服のサイズは5Lだから、伸ばそうが伸ばすまいが見栄えは変わらない。
「いらっしゃいませ~」
 猛牛が客に挨拶をした。仕方なく俺も「タッサッセー」と続く。
 ここは都内某所にある「高校生ホテル」である。一体何が「高校生」なのかというと、働いているスタッフが全員、高校生なのである。
 うちの高校は三年生になると、課外授業の一環として、このホテルで働かせられる。コンセプトは「高校生にこそ本物の教育を」だそうだ。給料なんて出ないから、当然やる気も出ない。ましてや夜は運営会社の社員と交代するから「高校生ホテル」なんて名ばかりである。
「お客様、本日はご宿泊ですかァ?」
 隣の猛牛が客に訊いた。相変わらず鼻につく言い方。学校だったら殴ってる。客は五十代くらいのオッサン。泊まりだという事で、猛牛が手続きを進める。
「それではお客様。客室の方までご案内させていただきまァす」
 猛牛が客に言った。何が本物の教育だ。高校生のうちからこんな喋り方をして、一体どんな大人に育つっていうんだか。
 俺は襟足の髪をイジくりながら「どぞー」と呟いて、客をエレベーターまで案内してやった。俺の担当はベルボーイ。基本フロントに突っ立っていて、泊まり客が来たら客室まで案内してやる役だ。
 客とエレベーターに乗った。別にエスコートなんかしてやらない。俺がデコピンで「閉」ボタンをピンッと弾くと、木目調の小箱は上昇を始めた。アア下らない。アアかったるい。人間はどうして働くのだろう。
「あ~ダリィ」
 しまった。つい心の声が口から滑ってしまった。まぁどうって事はあるまい。客はビターチョコみたいな扉を真っ直ぐ見つめているから、俺の発言なんて別段、気にも留めていないだろう。

「2」

「前代未聞のクレームだぞッ!」
 先生に呼ばれたので何事かと思ったら、開口一番叱られた。
 ここはホテルの事務所である。事務机とパソコンが三つ。あとは全部ゴミだろう。バカみたいに貼られた壁の掲示物に、段ボールやクリアファイル。
「木村ァ!」
「なンスか」
「お前お客様にタメ口で話したろうッ!」

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