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『掲示板ホテル』沖原夕

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 気づいたら、私はこのホテルの前にいた。 どうやってここまで来たのかはよく覚えていない。覚えているのは、私の言葉に悲しげに顔をゆがめ、私の脇をすり抜けていった元恋人と、電話越しに激怒していた元親友の声だけだ。気づいたら財布とスマートフォンだけを入れた鞄を持って部屋を飛び出し、このレトロな雰囲気漂うホテルの前に立っていた。
「ご宿泊ですか?」
 私が突っ立っていると、ホテルの中からシャツに黒ベストを着た、清潔感溢れる初老の男性が出てきて私に訊ねてきた。恐らくここのコンシェルジュだろう。
「そうです。一泊二日で」
 私はとっさにそう答える。すると男性は
「ご予約はされておりますか?」
「いいえ。実はしていなくて…。もし満室なら結構です」
「確認致しますので、ロビーでお待 ちいただいてもよろしいでしょうか?」
「ありがとうございます」
 こうして私は、ホテルの中へ足を踏み入れた。

 中に入った途端、私は「えっ」と小さく声を漏らしてしまった。ロビーには、学校にあるような黒板の3~5倍はありそうな巨大な掲示板が中央に立てられていた。
 近づいてみると 、「明日のお食事のご案内」といったチラシや、「全国明日の天気予報」「今日のトップニュー ス」といった記事が書かれた紙が掲示板の中心部分に貼られていた。そしてその周りには、チョークで書かれ た「今日は和食に変 更したいです。203 」「305田村様 明日、昼食は12時半からにしませんか? 101大塚」といったメッセージが多く書き込まれている。
「なんだこれ。スマホで送ればいいのに」
 そう思っていると、先ほどの男性が姿勢よく歩いてきて
「大変お待たせ致しました。一部屋空きがございますので、是非当ホテルをご利用いただければと」
「ありがとうございます。じゃあ泊まらせてもらいます」
「かしこまりました。それではさっそくチェックインの手続きをさせていただきます。こちらへお越しください」
私はロビーにある受付にある椅子に座り、男性がテーブルに置いた案内書を見る。
「当ホテルでは、すべての情報交換はロビーにございます掲示板で行わせていただいております。部屋の電話は、緊急時のみご利用くださいませ」

「はあ…」
「それでは、お手持ちのパソコン、スマートフォンは預からせていただきます」
「え?」

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