『ナスビ島』
義若ユウスケ&とじひも
(『トロール民話』)
パサツグネ・バサ子はナスビ島にひとりで暮らしている。彼女は鳥人間だ。だから、よく空を飛ぶ。ある晴れた日の朝、彼女はパジャマのままで外へ飛びだした。おおいなる悲劇が待っているともしらずに……
『夢みてえな一錠があんだけどよ』
田中慧
(『スピードのでる薬、怪盗紳士ルパン』)
アニキに呼び出された俺は、朝早くから家を出たんだ。アニキは遅刻癖が酷いってのに、今日ばかりはどういうわけか俺より先に着いていた。知らねえ外国人と共にな。アニキは俺に一錠の薬を差し出した。ニヤけっ面の張り付いた顔面のまま、な。
『三枚のかさぶた』
鈴木りん
(『三匹の子ブタ』)
ファミレス店長である良平は、夜勤明けの通勤途中、駅で階段を転げ落ちて体中に怪我をする。とにかく眠い良平は、心配する駅員を振り切って自宅に戻り、そのまま寝てしまった。その後、部屋に来た彼女の幸恵が寝ている良平の掛け布団を剥ぎ取ると、彼の体にたくさんのかさぶたができていて――。
『Tonight, Tonight』
平大典
(『カチカチ山』)
会社員の高梨は、憧れの先輩である朝霧に誘われて、夜のドライブに出かけるが、彼女は目的地など詳細を教えてくれない。下心もあるため強い態度に出ることも出来ず、朝霧の指示通りに人の気配がしない夜の山中を進んでいくが……。
『You still life』
サクラギコウ
(古典落語『短命』)
褒め上手、煽て上手の妻に乗せられて、走り続けてきた人生だった。妻に内緒で早期退職者に手を上げたが、打ち明けられずに退職の日を迎えてしまう。会社へ行くと言って出てきた男は、見知らぬ土地で一人の老人と知り合い、3日間を一緒に過ごしているうちに、退屈な人生だったと不平不満ばかり漏らしてきたことに気づく。
『幽刻』
乃木宮稜
(『変身』)
事故で運び出される自分の遺体を目にしたとき、私は自分が幽霊になってしまったことに気が付いた。徐々に日常の外側に追いやられていく感覚に気付くこともないままに、死んだ私は両親と共に住む自宅へと帰るのだが――
『六徳三猫士・結成ノ巻』
ヰ尺青十
(『東の方へ行く者、蕪を娶ぎて子を生む語:今昔物語集巻廿六第二話』『桃太郎』)
十二世紀末、金ノ裏の合戦にて猫丸家は鬼角氏に敗れ滅亡。落人たちは東北奥地・魔羅丘に逃れた。一族の血を残すべく子種を蕪に詰めて川に流したところ、食した女たちから次々に子が産まれる。やがて二一世紀、猫丸直系の三氏が結集し、今なお猫丸系を苦しめ続けている鬼角系への復讐を誓いあった。
『白雪』
南りり
(『白雪姫』)
王子様と結婚して叶う幸せな生活なんてあるわけがない。白雪姫がこの私よりも大切にされてなるものですか。継母の執念が生んだ炎の物語。語り手は白雪姫のようであり、継母である。それが誰なのか、一筋縄では掴めない。惨劇は森の中で勃発し、もちろん王様の住む文明世界が気付くはずもなく...。
『再び』
川合玉川
(『浦島太郎』)
高校のボクシング部をケガで退部してから、空虚な日々を送る宮浦。毎日、クラスメイトからいじめられていた同級生の亀松を、ふとした気まぐれで助けることになる。亀松を助けたことにより、宮浦には災難が降りかかることに――。