『とある夫婦とブランコ』
鷹村仁
(『夢を買う』)
53歳でお笑い芸人の健一は旧友から専門学校の『先生』をやらないかと誘われる。それは就職の誘いでもあった。健一は今自分が置かれている状況を考え、『お笑い』か『先生』かで悩む。
『ただ、単純に。』
鷹村仁
(『しろいうさぎとくろいうさぎ』)
ある時妻は興信所を使って夫の浮気を調べていた。全く身に覚えのない夫は、妻を安心させるために出来る限りの行動を取ることにした。しかし、それでも妻の心配は止まることはなかった・・・。
『空蝉の部屋』
緋川小夏
(『檸檬』)
琴子は離婚した、かつての夫・亮悟の元へ足繁く通っている。亮悟はいつも横暴な態度を取るが、琴子は黙って従っている。琴子には、亮悟を棄てたのは自分だという負い目があった。ある日、亮悟から「檸檬が食べたい」と珍しく連絡があった。琴子は檸檬を抱えて亮悟の部屋へと向かうが……。
『アーサー王と抜けない聖剣』
田口浩一郎
(『アーサー王伝説』)
若き騎士アーサーは、王位継承者しか引き抜けないという石に刺さった聖剣を引き抜き、全ブリテンの王として認められてしまう。これに不服の諸侯を納得させるため、何度も剣の引き抜きをさせられるアーサー。国王即位に乗り気でない彼は、剣が抜けなくなってしまった体を装い必死に宿命から逃げ回る。
『真行寺美鶴は恩返せない』
柘榴木昴
(『鶴の恩返し』)
いつも不運に見舞われる、ちょっとおとぼけな美鶴。今日もトラブルに巻き込まれるものの同級生の望月君に助けられた。これは恩返ししなくてはと奮起するがなかなか上手くいかず……。
『ギア』
広瀬厚氏
(『歯車』)
もうすぐ30才になる売れないシンガーソングライターの純は、幼少の頃からたびたび奇妙な現象に襲われ、悩み苦しむ。ある晩ライブで観客として来ていたひとりの女性のことが彼はとても気になった。
『鈍い痛み』
黒藪千代
(『一寸法師』)
「いざ!成敗っ!」甲高い小さな声を浴室にコダマさせて現れた小さい人。針のような剣を持ったまま耳の中からオレの身体の中に入り込んだ。幻だ!オレは疲れているだけだと思っていた。それなのに、日毎強くなる身体の痛み。チクチク、チクチクと。一体何を成敗されているのだ。