『おとななまはげ』
新田塚道雄
(『なまはげ(秋田民話)』)
一年に一度、悪い大人を懲らしめる『おとななまはげ』が出現する日がやってきた。私はバスルームにこもって震えていた。隣の家から、『おとななまはげ』に襲われた悲鳴が聞こえて来る。どうしよう。どうすれば『おとななまはげ』に許してもらえるのだ?
『鉢姫花伝』
三号ケイタ
(『鉢かつぎ姫』)
私の頭には、昔から鉢がかぶさっている。自分のそれが普通でないと知ってから、私はそれを受け入れて過ごすようになった。私は努めて、周りに迷惑をかけずに、周りに感謝しながらおとなしく過ごして大きくなり、そして高校を卒業したのだった。
『白雪姫と多勢に無勢のこびとさん』
島田悠子
(『白雪姫』)
紛糾する学級会の結果、4年1組の学芸会の出し物は「白雪姫」に決定した。が、女子のほぼ全員が白雪姫役というムチャクチャな結論に。クラスで3人しかいない男子の一人、こびと役の瀬戸翼は女子にふりまわされつつも舞台の成功に向けて奮闘する。翼のガラにもない熱意と努力にはワケがあって……。
『the study』
阿部哲
(『聖書・創世記』)
明日から夏休みという日の夕食の最中、思い出したようにパパが口を開いた。「たかし、自由研究のテーマはもう決めたのかい?」たかしはナポリタンのフォークを止めてパパに応えた。「いや、なんにも考えてないよ、パパ」
『腫れ物地獄と純粋めいた愛』
あざらし白書
(『笠地蔵』)
十年間、まっすぐ仕事に打ち込んできた地蔵。家庭を築き、子供も生まれ、何不自由のない愛の中に生きてきていた。しかし、雪の音もとどろくある豪雪の日、爺さんの代わりに現れたのは、少しだけ特別な感情を抱いていた同級生の「あっちゃん」。あっちゃんとの出会いで、地蔵の心は乱れに乱れていき…
『天と地を求めるように宙を舞う指』
もりまりこ
(『蜘蛛の糸』)
ゴートゥザヘルって継父をののしったその日、ヘルにおちてしまったのはあたしのほうだった。ここでパルクールしていた通称ランくんと出逢った。ヘルでは何年にかに一度だけ天から蜘蛛の糸がつつつと降りてくる日があるらしい。たぶんその日がきてもランくんがぶっちぎりだろうなってあたしは踏んでいた。
『カメトオトヒメ』
志田マイ
(『浦島太郎』)
仕事で海に来ていたカメラマンの主人公は、入水自殺を図る美女を助けて部屋に招く。美しくも不思議な雰囲気を放つその人は自分のことを乙姫と言った。カメラマンはその美しさに翻弄され、乙姫に近づくが・・・・・・。
『澄んだ風と感情の具象化 アニメ的な挿入・エピローグ』
誰何苹果
(『老人と海』)
才能がある。僕には才能がある。そんな思い込みも、いよいよ難しくなってきた。こいつを成功させないと、僕の信じた使命が幻と化すかもしれない。五十歩ほど先には雄々しいライオンがいた。
『ブルーベルベット』
義若ユウスケ&かいかなみ
(『スーホの白い馬』)
ある日、〈ぼく〉とガールフレンドの花子がファミリーレストランで食事をしていると、一人のカウボーイが馬に乗って店内に乱入する。〈ぼく〉と花子はカウボーイの馬を奪って美味しいデザートを探す旅にでるのだった……