『in New World』
内藤ハレ
(『不思議の国のアリス』)
娘は自分の元に戻ってこない母を追って外の世界へ。不思議な生き物のいる森や魅惑的な街を通りながら出会う、不思議な人影。彼らに母が残したある言葉の意味を問いながら、娘は母を追いかける。
『畑で歌を口ずさみ』
いいじま修次
(『動くかかし』吉四六話し(大分県))
老齢により畑仕事が難しくなった茂平治だが、その心配はいらなかった。その畑では何年も前から何も作られておらず、雑草が生えているだけだったから。だが体だけではなく、頭の働きも衰えていた茂平治はそれが分からず、今日も畑にいた。
『銀河鉄道を夢見た夜』
こうすけ
(『銀河鉄道の夜』)
繰り返す日常の歯車として馴染み始めた社会人2年目の俊太。ある朝、いつもの電車で出会った一人の少年。彼への良い知れぬ嫌悪感はどこから来るのか、、、。初めて出会ったはずの少年に見るいつかの銀河の行方の話。
『狐に教わる工事のススメ』
粟生深泥
(『亀割石(熊本の昔話)』)
久万村で橋の建替工事に臨む『僕』は、地中の硬い岩に阻まれて杭の打設工事を進められないでいた。そんな時、久万村の日和田課長から川で工事を行う前には白狐神社にお参りする習わしがあると聞く。後輩の星野とともに神社に参拝すると、星野は「岩を割る方法を思いついた」と言い出した。
『不思議の国のあいちゃんたち』
淡島あわい
(『不思議の国のアリス』)
飼育係のあいちゃんが、逃げた白兎を追って行方不明になった。全国の学校で問題になっている「ラビットホール現象」だ。あいちゃんを取り戻すため、3年1組では学級会が行われる。友情に燃え、熱い議論を交わす児童たち。しかし、誰かの不穏な一言で教室中が凍りつく。
『二度寝』
やまこしひなこ
(『眠る森のお姫さま』)
「その手を糸車のつむにさされて、けがをして死ぬだろう」という悪い妖女の預言は良い妖女の力によって「100年の眠りののちに王子がやってくる」とされた。と、私たちは思っているけれど、良い妖女がかけた本当の魔法はそうではなかった。良い妖女の本当の、叶わぬ願いの話。
『シン・デレラ』
駿平
(『シンデレラ』)
物語は時代に合わせたアップデートが必要だ。童話の世界もその例に漏れることはなく、シンデレラは毎回“読者の皆さま”からの修正要望に頭を悩ませていた。そしてそんなある日飛び込んできたとんでもない要望に対して、ついにシンデレラの堪忍袋の緒が切れた。ガラスの靴を変更しろだなんて!
『アップ!』
香久山ゆみ
(『浦島太郎』)
毎夜ステージで踊るタツノオトシゴ。金魚みたいな赤いひらひらを着て、メイクをしてもおてもやんみたいで、全然鯛や鮃のように美しく舞えない。タツノオトシゴはここに捨てられ育てられた。ここは、キャバレー竜宮城。早く大人になって、愛しい人とここから抜け出すことを夢見てる。
『正解な道』
真銅ひろし
(『桃太郎』)
専門学校の職員、黒田健吾。彼は『声優・俳優学科』を担当している。働き始めて6年経つ。結婚もしているし職場にも慣れた。しかし彼には自分で蓋をしてしまっている“ある”感情があった。そして大学の同級生の舞台を見た事によってその蓋が外れてしまう。何が正解な道なのか?黒田は改めて考え始める。