長らく介護をしていた母の葬式を終え、久しぶりにワインを飲もうとする泉。しかしグラスに注ごうとすると手が震えた。震える手を見つめ、泉はその震えが始まった日のことを思い出す。その日、泉は車椅子に乗った母を丘の上から押し、そのまま手を放したのだった。
カオリの美貌は男性達を常に虜にしてきた。ルッキズムの勝者だ。だが、それはカオリの意図ではなく、むしろカオリは全く幸せではない。見掛けだけが話題になる世間への不信感から、男性に恋することができなかった。アプローチを断り続けるカオリは、いつしか『かぐや姫』と揶揄される。
地方から上京し、孤独な学生生活を送っていたヒロムの許に、若い男に化けた猫が恩返しにやってきた。「鶴じゃないので、機織りはできない」と宣言し、ヒロムにつきまとう化け猫男。彼が呼び水になって、ヒロムには人間の友だちができ始めるのだが……。
暗く深い群青色に包まれ、ゆらめく海の底。ここ龍宮城では、浦島太郎をもてなす宴が催されていた。時を同じくその宮で、リュウグウノツカイは自身の役目を待っている。浦島伝説の裏で展開される、リュウグウノツカイの物語。
写真大好き金髪ギャル「ナミ」、反対に写真嫌いの「カオリ」、そして同じ寮生の「アユコ」。三人でいることが楽しい故に、時が経つことで手の届かない思い出になってしまうことをカオリは恐れていた。しかし、ナミが亡くなる。残された彼女たちがとった行動とは。
カフェで見知らぬ男性が声をかけてきた。男性は私が夢の中で食べたステーキ代を請求し、ウェイトレスは注文したものと全く違うものを持ってくる。私は注文してもいない料理が運ばれてこないことに憤慨する。何もかもがおかしい夢の中で、私は夢の意味を徐々に理解する。
三方を山。もう一方を深く大きな谷。この村は、凛々しい自然に囲まれるように存在している。少年クランはある日、幼馴染の少女ノルウェールと共に、村を出ていく決断をする。だが村を出るには、谷に架かる橋を渡らなくてはならない。その近くには、ある一人の男が住んでいた。
何度そこへ時間を巻き戻せたとしても、里紗は必ずその男を殺す。そうしなければ、「なぜ殺さなかったのか」という混沌に苛まれてしまうから。裁かれない殺人を犯した彼女は、元の形を失ったまま生きていく。
黒牧緑は同じ美術部の門田香帆の事が気になっていた。
何故なら、門田の左耳はちぎれており、彼女の描く絵は不思議な絵柄だからだ。そして門田が学校を辞める日、黒牧は門田が音を見ることが出来、それを気味がった母に耳をちぎられてしまった事を知る。黒牧は絵を描いている門田の絵を描いて渡す。