『摩周のえくぼ』
難波繁之
(アイヌの民話『島になったおばあさん』)
アイヌの村にアシリという青年がいました。アシリは湖の自然を愛し生活していましたが、ある日、湖の神がやって来て「湖から出て行きなさいと」言われたが2人は愛し合うようになりました。その後、魔物が現れたり、火の神が現れたりして2人を苦しめますが、妖精たちと力を合わせて湖を復活させ摩周湖ができました。
『なんで?』
真銅ひろし
(『桃太郎』)
主任の美智子先生が「桃太郎」を「桃姫」に変えたいと言い出した。呆気にとられる職員。しかし私が余計な事を言ってしまい、次回の会議までにお供の動物と物語の内容を考えて来ることになってしまった。
『おめでたくない人々』
裏木戸夕暮
(『おめでたき人』武者小路実篤)
地味で平凡な山田は、優秀な従兄弟の一彦に引け目を感じながら育った。二人は久しぶりに再会して酒を酌み交わす。一彦が帰った後、山田は自分の心境をバーテンダーに語り始める。
『笛吹幽霊』
春日野霞
(『笛吹川』)
残暑が厳しい、山梨県の笛吹市。吹奏楽部のフルート男子・日野は、同じパートで不登校のゴンにプリントを届けに行く。日野はゴンを散歩に誘った。夜ごとに笛を吹く幽霊が出ると噂の、笛吹川への散歩に。
『初恋玉手箱』
松本侑子
(『浦島太郎』)
浦島太郎は玉手箱を開けなかった。そしたら、年をとらなくなってしまった。浦島太郎は名前と住む場所を変えながら、終わりのない日々を生きていた。ある日、太一と名前を変えた太郎の前に女の子が現れる。その子は太一がとても大事にしている思い出のあの人にそっくりだった。
『衝動』
さくらぎこう
(『誰も知らぬ』)
お見合い結婚だったが10年間幸せだった。だが「衝動」的な夫の裏切りを知り深く傷つき許すことができなかった。「衝動」的な行為など自分にはないことだ。想像することすらできなかった。だが実家に身を寄せている間、同級生の死を知り、自分の人生にも「衝動」があったことを思い出す。
『酒は飲むべし飲むべからず』
太田純平
(『呑仙士』)
ある朝、目が醒めると、知らない男と裸で抱き合っていた。ズンとみぞおちに氷の棒でも通るような恐怖を覚えながら、南出秀一の脳裏はこの男を検索にかけた。「金髪、三十歳くらい、色白、顔は整っている」――しかし誰もヒットしない。この男はいったい何者だ。
『県営球場の三遊間』
斉藤千
(『藪の中』)
甲子園出場を賭けた地方大会決勝戦で、ショートの選手のエラーにより逆転負けを喫した野球部。試合後、部の内外ではある噂が囁かれ始める。それは「エラーが故意に起こされた」というものだった。
『醜くなかったアヒルの子』
五条紀夫
(『みにくいアヒルの子』)
お屋敷の庭で生まれた可愛らしいアヒルの子。そのアヒルの子に弟が生まれたのだけれど、その子はとても醜かった。ただ、特別な何かを秘めているような気がする……