『垢を脱ぐ夜』
一二三季子
大学生のハナは、好意を抱いている先輩のタツに花火大会に誘われた。美容師の宮越は限られた時間の中で素敵にヘアセットし、緊張するはなを明るく励まし送り出す。綺麗に垢抜けたハナとタツは恋を実らせた。美容師の宮越は日常の中でさりげない存在ながら、ハナに自信ときっかけを与えてくれていた。
『みちばたブーケ』
倉吉杜季
季節ごとの花に飾られた美容室。ある夏の昼下がり、打ち水をしていた往来を通りがかった彼女は、まだ芽が出ない芸人だった。髪を濡らしたお詫びとして考えたのは彼女の為の斬新なカット。そして「夢叶う」の花言葉を持つ青薔薇を贈る。季節が変わる頃、彼女は大きな仕事が決まったと報告にやって来る。
『紙づつみ』
小野みふ
出張ついでに実家へ寄った美幸は、母のために包装紙で美容室代をつつんで食器棚に忍ばせる。帰りがてら、上京したてのころ小包を受け取るたび、茶封筒を持って美容室に行ったことを懐かしく思い出す。後日、スマホの画面越しにきれいな栗色に髪染めした母の笑顔を見て、胸がじんわり温まっていく。
『美容室で元カレに出くわしたときは』
筒遙
かかっているケルト音楽が人気の美容室「コスタ」の常連客の加奈は最近恋人とうまくいっていない。電車で置き引きに遭ったのをきっかけにふられてしまう。意気消沈していたがコスタで元恋人に偶然再会すると、かかる音楽に背中を押され思い切った行動をとる。
『幸せな香り』
広都悠里
カラフルなボトルがずらりと並ぶ美しさに心惹かれ、入った店には「生涯一度限り」と書いた紙が貼ってあった。選んだボトルはその人に必要なものが含まれた特別なシャンプー。その店は会いたいと思っていた人が現れて、髪と一緒に思い出や心を洗ってくれる不思議な店だったのだ。
『魔法のステッキなんかなくたって』
小山ラム子
美容師であるわたしは久々に来店したお客さんである真田さんと話をしている内に、自分が美容師になった理由について思いを馳せることになる。
『私の美容師さん』
いずみさや
「私」は、美容師の瀬戸さんに十年以上、髪を任せている。年齢不詳であけすけな性格の「魔女のお姉さん」こと瀬戸さんに髪を切ってもらうと、どんなときでも不思議と心が晴れる。「私」は髪にまつわる悩み抱える友人を、瀬戸さんの店に連れてゆく。瀬戸さんは見事な魔法で、彼の心も晴らす。
『黒い花束とオレンジのライオン』
小俣まお
私は中学でも、高校でも周りの子との関係がうまくいかず、そんな自分に落胆している。唯一好きな絵にも自信が持てない。とある日、美容師の森谷に出会い美容室ミラージュの存在を知る。非日常的な夕焼け色の内装の美容室で、絵画や森谷の言葉、新しい自分の姿に出会い、私が少しだけ前向きになるお話。
『名刺の彼』
水叉直
美容師として三年目を迎える岩瀬奈緒の前に、客として現れた営業会社一年目の森川健。挨拶として奈緒が差し出した名刺に対して、お客であるはずの健も名刺を差し出した。奈緒は既に乗り越え、健が現在直面している新人という壁。同じ年齢の二人の出会いはお互いの心を引き寄せ合う。