LOVE KAMATA AWARD第3期にご応募いただいた作品の中から選ばれた優秀作品38作品です。
『迷ったら、観覧車。』
もりまりこ
柊小夏は、すこし途方に暮れていた。大好きだった爽が最果ての岬で死んでしまってから、未来がみえなかった。それでも生きていく為に、流れ流れてたどり着いた場所がこの街だった。まるでオワリノハジマリのようなじぶんの気分にも似た、そんな駅に小夏は降り立っていた。少しだけ秘密を抱えて。
『高田酒店』
3丁目のタダ
大学生の私は自動販売機から発泡酒が出てこず苦情を言いに高田酒店に入る。店主のセンセイと三田さんに出会い、それから酒店へよく立飲みに通う。町を去ってからも高田酒店を度々訪れる。町も人も変わっていくが高田酒店だけはずっとそこにある…。
『drops』
友松哲也
僕は父の葬式で不思議な光を目にする。それは「ドロップス」という名前だとあかりは教えてくれた。その光は僕に何をもたらしてくれるのか。
『シングルエコー』
潮楼奈和
夫婦で小さな居酒屋をしている賢吾は、街に帰ってきた幼馴染である亮二の子供、寛人の夕食を世話している。賢吾は、寛人を実の子のように可愛がっていたが、それは善意だけではなく、ある負い目からだった。ある日、寛人の担任から寛人がカツアゲをしたと連絡が入る。寛人の真意に、賢吾は過去と向き合うことを決める。
『商店街HERO』
鈴木沙弥香
保育園で「しゃべれないとヒーローになれない」と言われ自分の夢に絶望する。そんな時、母・由美におつかいを頼まれた翼は商店街へ向かう。だがそこでは怪物たちが悪さをして人々を困らせていた……。
『想い』
九
柊木サナエは、夫と娘と共に商店街で開催されている祭りに行った。親子三人で祭りを満喫したサナエであったが、一番の楽しい時間は祭りの翌日に訪れるのであった。
『プラチナ五重奏(クインテット)、プラス夢見る睡蓮』
星野有加里
七音は音大でヴィオラを学んでいる。だが、人生初のスランプに陥り、苦しい挫折を味わっていた。ある日、祖母の家を訪ねようと蒲田駅に降り立つと、駅前広場でクリスマスコンサートをする白髪集団の五重奏に出逢った。数分後、思いがけない展開が七音を待ち受けていた。世代を超えて音楽で繋がる物語。
『日の出通り商店街』
蒔苗正樹
新入部員が途絶え、存続が風前の灯の大成高校写真部。起死回生をかけた文化祭の展覧会に向けて、写真部員のトキオは商店街で精肉店を営業する強面店主の撮影を試みる。精肉店の夫婦とふれあう中で、トキオは自分と精肉店のささやかだけど大切なつながりに気づいていく。
『最後の観覧車』
中塚さおり
十三年前に蒲田に越してきた母子、夏子と志郎。シングルマザーの夏子は商店街の餃子屋で働きながら、たくましく志郎を育ててきた。十八才になった志郎は、庭師の仕事もやめてパチンコ店に入り浸る日々を送っていた。ある日、夏子から余命三カ月だと告げられる。夏子の志郎への最後の願いは意外なもので―