LOVE KAMATA AWARD第3期にご応募いただいた作品の中から選ばれた優秀作品38作品です。
『今どこにいるの?』
藤島ひろき
10月半ば、東京で大学に勤める佐藤裕樹は日本橋のデパートで販売員の岸本里華と出会った。初対面にもかかわらず急速に親しくなり心も通じ合っていた二人だったが、2月になって急に会えなくなった。裕樹が職場の任期満了で東京を去る直前の半年間に里華との間で起こった不思議な出会いである。
『葬式のススメ』
赤松新
太田昭雄(71)は、妻の弘江(67)の急な思い付きにより、葬式の段取りの練習を付き合わされる。葬式経験が豊富な近所の高橋に教わりながら、また、友人やパート先で知り合った女子高生を弔問客に見立て、スムーズなご焼香、喪主としての立ち振る舞いを学ぶ弘江。そして、その三ヶ月後…
『春巡る』
伽倶夜咲良
美弥花が蒲田の街を訪れるのは初めてだった。普段は馴染みのない街。だけど今日はこの街に来るのが楽しみだった。蒲田八幡神社とその兼務社のリニューアルされて新しくなった御朱印を拝受しに来たのだ。そして始まる少し不思議な物語。神社を巡りながら自分と蒲田の意外な繋がりを知ることになる。
『他人のいる町』
円堂久遠
社会人三年目にして、初めての一人飲み。廃墟ギリギリの店。そこで会った惹かれる女。その女との逢瀬をサポートする暇な人間。これは人生うまく運んでいるんじゃねぇかという淡い勘違いと、もちろん現実はやっぱり現実。誰の名前も知らないし、知る必要もない。
『あしたのスマイル』
飯島愛
特に自分の町に愛着を感じることもなく、ひとりで孤独に暮らしていた老人、欽治。中学の同級生だった昭夫と再会し、中学のときと変わらぬお節介ぶりに最初は呆れていたが、だんだん巻き込まれていく。そしてお節介がやがてビジネスへと変わる。欽治はそのビジネスを通して町への愛着と生きている実感を取り戻していく。
『彼方の道』
本間文子
蒲田は不思議な町で、東急蒲田駅周辺では何かの拍子に道が1本増える。道は美しい風景につながり、幸運の兆しだと昔から言われている。愛媛県に就職した繭子が、母の墓参りのため5年ぶりに帰京した。時計修理屋の父は相変わらず仕事に夢中。繭子は約束を破られ憤るが、その背中から仕事の意味を学ぶ。
『こうして、今日も街の景色は』
ふささらさらさ
蒲田にまつわる3つの場所を、3つの視点で描くオムニバス作品。大学の課題のため、かまたえんの観覧車に乗るカップル。西蒲田公園で娘と遊ぶ若い父親。サンロードの喫茶店の主人。それぞれが街の景色に想いを抱き、それらは次第に交わっていく。平凡な街は温かく、街の一部は街の全てになっていく。
『夜空にまわる』
山本憲司
父の葬儀のため写真館である蒲田の実家に帰った千秋は、不倫した夫と別れそのまま実家に居つこうとしていた。娘の優衣を使い母の布美子に取り入ろうとするが、折り合い悪かった母子はぶつかる。おまけに夫が押しかけてきた。行き場がなくなってしまった千秋が救いを求めたのは、屋上遊園地だった。
『約束の観覧車』
益子悦子
守は父親の入院の見舞いで、二十年ぶりに蒲田に帰ってきた。まず向かったのは観覧車。家族の思い出が詰まった観覧車がまだ動いていることに心の安らぎを覚える守。そして初恋の相手、なっちゃんに出会う。妊娠八か月のなっちゃんはしあわせそのものだったが、意外な事実を守に打ち明ける。