LOVE KAMATA AWARD第1期にご応募いただいた作品の中から選ばれた優秀作品17作品です。
『コーラ、コーヒー、雨』
室市雅則
男は出張先で小学校の時に離れた街のことを思い出した。 そこには転校前にケンカをしたままで別れた同級生がいた。同級生の家は喫茶店を営んでおり、父親に連れられよく通っていたが、今はどうなっているのか全く知らない。男は同級生と店を確かめるために家族を連れて、その街に向かう。
『あした、またね』
サクラギコウ
離婚して実家のある蒲田に戻った私は、仕事が終わると保育所に娘を迎えに行き、商店街で買い物をして帰るのが日課だった。ある日、八百屋のおじさんが娘に言った「あした、またね」という言葉が、私の中で眠っていたある記憶を蘇らせる。それは子どもの頃、延命寺の境内で体験をした、不思議な少女との出会いだった。
『きっずハンド』
黒藪千代
運動神経抜群の妻と運動が苦手な俺。二人の間に産まれた幸太郎は身体を使って外で遊ぶ事が大好きになった。子供の成長に合わせて変化していく家族と夫婦の状況。必死で馴染もうとする俺はある秘密兵器を手にする。しかし秘密兵器よりも大切な繋がりがあったのだと気づく。
『音を紡いで』
星日ト奏
世の中は、音で出来ている。そんな風に思ったのは、この街に来てからだ。青木なみ、フリーランスのフォトグラファー。桜の季節になると、ある小さな街を訪れるようになり、はや五年の月日が過ぎた。
『手と手』
十六夜博士
長年愛され続ける老舗が沢山ある街で、生まれた時から暮らしている雅美。シングルマザーの母と過ごす平凡な日常は、街の老舗同様、ずっと変わらない気がした。そんなある日、ひょんな事から雅美の人生が動き出す。平凡だと思っていた人生は、気付けば編み物のように独自の模様を紡ぎだしていた。
『餃子の神様』
井口可奈
餃子の神様が願いをかなえてくれるといううわさが蒲田に流れていた。僕は餃子屋で餃子の神様と出会う。餃子の神様はただのじいさんに見えるが……?
『藤色の、ラベンダー色の、空の、』
園山真央
幼いころに両親が離婚したため父親を知らずに育った加奈子は、春から新社会人となり蒲田で三か月間の研修を受けていた。ある時、「ラベンダー・メリー」と名乗る男に声をかけられる。男は実は加奈子との再会を願う祖母の祈りを受けて人間に姿を変えた蒲田のデパートのマスコットキャラクターであった。
『食いきれないパスタ』
鷹村仁
蒲田にあるパスタ屋に20年ぶりに訪れた。懐かしくパスタを食べていたが、実はそこのパスタ屋は商業ビルが建つため近いうちに立ち退く事を知る。時代の流れや、“街”のあり方を考えさせられた。
『もったいないから』
西橋京佑
酔いが、孤独感と猜疑心を異様に掻き立てたその日、僕には新しい友達が二人できた。なんでもない会話、馬鹿げたやり取りに安堵感を覚えて、僕らは「もったいないから」もう一度会う約束をした。僕と、シルバーさんと、小太郎くん。三人の、ある日曜日のお話である。