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『もったいないから』西橋京佑

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 僕は孤独を感じて電車に乗っていた。さっきまでの賑やかさが嘘のように、酔っている感覚だけを体のそこかしこに覚えながら。
 Facebookを開くと、見慣れているはずなのに“見慣れない”友人の顔がバコバコとあがっている。親指を下から上にスクロールし続けても、僕の知った顔は何故だかでてこない。
 広告、見慣れない顔、見慣れない顔、広告、ニュースのシェア、広告。
 そこには、目を瞑っても名前をあげられる人たちが、大半登録をしているはずなのに。僕は、”その人たち”のことをよく知らない。それは、ところ変わってInstagramでも同じことだ。
 直接会えば、きっといつもの感じ。それでも、知りたいようで知りたくなかった情報が、誰も意図していないはずの疎外や結託といった妄想が、実しやかに襲いかかってくる。知らなければ、なんでもない日曜日の夜を過ごせるはずなのに。このそこはかとない寂しさは、一体何なのだろう。
 気がつけば、LINEのメッセージが8件。気のおけない仲間、のはずのグループ。左にスワイプして、中身をみることなく既読スルーすることにした。いまは、もうこれ以上の寂しさを受け止められるような気がしなかったから。
 それでも、寂しさは足が速い。心の隙間に入り込んで、隙間を目一杯に押し広げようと、手も足も頭も使って目一杯に外に向かって押し広げる。ドクンと、心臓が血液をポンプして、寂しさも一気に駆け抜けた。さいあくだ。この寂しさを避けるための心構えは、間に合うことがいつもない。
 ソワソワしてきた僕は、気を紛らわすために周りを見渡した。みんな顔とスマホがくっついてしまいそうなほど、夢中になっていじくり回している。たぶん、パズルか何かやっているんだろう。一心不乱に指を動かすその姿が、だんだんロボットみたいに見えてきて、少し身震いをした。たまにある、僕以外の世の中の人はみんな偽物なんじゃないか、というあの妄想が頭を駆け巡る。友達のほとんどがそんな妄想を抱いていたから、もしかしたらあながち嘘ではないのかもしれない。
そうこうしているうちに、電車は次の駅に到着した。ちょうど僕が座っている前の席が二つ空いて、停車した駅で乗り込んできたお爺さんと、工場勤務らしき若者がいそいそとその席に座り込んだ。少しばかり、お爺さんのほうは赤ら顔がすぎていた。
 「このまえね、出会い系サイトに登録したんです」
 若者が大きな声で喋った。この人も酔っているようだ。手持ち無沙汰な両の手を合わせ、指だけをグルグルと糸巻きのように回していた。
 「わかりますか?出会い系サイト。出会いたい人たちが登録する、あれです。で、メッセージとか送るじゃないですか。こんにちは、みたいな感じで」
 お爺さんはほとんど聞いていなさそうだった。目を瞑っているから、眠っているのかもしれない。それでも若者は、気にすることなく喋り続けた。
 「それでね、僕も送ったんすよ。そしたら返事きて。なんてきたと思います?”体の関係を見据えてお会いしたいです”って!やばくないですか?」
 そう若者が興奮して話すと、お爺さんはカッと目を見開いて怒鳴りつけた。
 「しょうもねえこと言ってんじゃねえ!」
 「えっ」

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