LOVE KAMATA AWARD第3期にご応募いただいた作品の中から選ばれた優秀作品38作品です。
『ハットしてグッド』
広瀬厚氏
フリーのイラストレーターである春良は、様々な街を転々としてひとり暮らす。前の街に飽き、今度越して来た街の商店街にある帽子屋の店先に飾ってあった、茶色いソフト帽が気になり彼は足を止めた。調子の良い店主に乗せられて、彼はその帽子を購入する事となる。
『ある。』
二十一七月
大学生の夏と同居する祖母朝子はある日突然ボケを発症し精神年齢が50歳若返ってしまう。21歳女子大生と自称する祖母はある日他界した祖父が残した写真と共に思い出の街を巡る旅をする事を決め、夏も同伴することに。50年前を生きる祖母と今を共有しながら夏の中で未来への思いが芽吹き始める。
『からくり日和』
井上豊萌
はじめて訪れた東京の下町で、自転車とぶつかった「私」を助けてくれたのは、不思議なおばあさんだった。会えば幸せになれるという竜宮童子を見つけるため、銭湯へと導かれた「私」は、おばあさんと幸せな時間を過ごす。はじめてなのに、懐かしい。心がふわりと温まる、あるひと時の物語。
『孝太郎じいさんと赤いゴンドラ』
鈴木りん
近所で評判のやんちゃ二人組の六年生、和希と愛美。そんな二人は、商店街近くに住む七十五歳の派手好きな孝太郎じいさんと仲良しで、夏休みでも近くの公園で一緒に遊ぶほどだった。そんなある日、和希と愛美はいつも夕方五時半きっかりに帰るじいさんの事が気になって尾行することになり――。
『受験前夜』
小川貴之
父に似て気ままな姉はバツイチになった翌年に突如大学受験を宣言。受験日前夜、故郷へ姉を迎えに行った僕は車中の会話の中で、かつての姉の奔放なふるまいを思い出す。なぜ急に大学受験を志したのか、その理由は明かされないまま目的地へと到着した僕と姉は、思いもよらない出来事に遭遇する。
『つながる思い』
網野あずみ
10年前に家を出て行った身勝手な父が、地元の商店街の催し物に呼ばれて帰ってくる。娘としてそんな父をどう迎え入れていいのか戸惑い、受け入れを拒む明日香の思いとは別に、商店街の人々も巻き込み、物事は父のペースで進んでいく。
『KAMATA55』
室市雅則
蒲田発のアイドルグループ『KAMTA55』のメンバーを募った商店街事務局。だが、集まったのは四人だけ。イベントでのお披露目は中止が出来ず、この人数で決行することになる。しかし、『四』は不吉と事務局の男性職員が駆り出され、『KAMATA5』として始動することに。
『ぼくは雨中を視る』
十塚三太
小学4年生の修平は、父親がいなくなったことで蒲田から引っ越すことになったが、あまり悲しんではいなかった。なぜなら、父親も蒲田も嫌いだったから。だけど、仲の良い幼馴染たちと分かれるのは少し悲しい。幼馴染たちは、そんな修平のお別れ会を開いてくれることになるが。
『落とし物のゆくえ』
大木泉
とある休日のショッピングモールでカヤコは落とし物の手袋を拾う。インフォメーションカウンターに届けよう、ただそれだけのことだったのに、カヤコの道のりは何故か険しい。途中、思わぬ人との出会いもあるが、果たして無事に手袋を届けることはできるのだろうか。