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『ある。』二十一七月

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おばあちゃんが、ボケた。

一口にボケといってもそれぞれ程度があると思うが、うちの場合はいわゆる若返りだった。

今のおばあちゃんは21歳女子大生の「朝ちゃん」だ、そうだ。

祖母の中村朝子は現在72歳である。数日前、自宅で具合が悪くなり少しだけ入院し帰ってきたら若返っていた。もちろん見た目の話ではない。心がすっかり女子大生の朝ちゃんになってしまっていたのだった。

わたし、中村夏は19歳の「今の」おばあちゃんと同じ女子大生であるが、21歳のおばあちゃんにはどうやら孫というより、大学の後輩に見えているようだ。

我が家は、おばあちゃんとお父さん、お母さんとわたしの4人家族で、おばあちゃんの息子であるお父さんは海外赴任中でもう2年日本に帰ってきていない。だから実質、現在は女三人家庭なのだ。

おばあちゃんはお母さんの事を自分のお母さんだと思っていて、だけど、自分の姿がおばあちゃんである事もわたしがおばあちゃんと呼ぶことにも特に疑問を抱いていなかった。

お母さんは「いいじゃない、若返ってトイレも自分で行けるし何より元気だし楽しそう。若い時のおばあちゃんってとってもチャーミングだったって評判だったって。一度会ってみたかったのよ」などと、呑気な事を言っている。お父さんには電話で連絡したとは言っていたけど、どうなのだろうか。やっぱりお父さんもカラっとしているのだろうか。

とはいえ、今のおばあちゃんは今まで見た事がないほどキラキラしている気がしたのは確かだった。頭は真っ白白髪で顔も手もシワシワなのに、とにかく毎日楽しそうで、ご飯もよく食べるし、鏡もよく見ている。おばあちゃんの中で起こっている不思議な矛盾が少しうらやましかった。ただし、この朝が来るまでは、である。

 
その朝は突然やってきた。フローリングの廊下を滑るようにして目の前に現れたおばあちゃんは、まさにやっちまったTHEボケ老人だった。わたしは朝ご飯のお箸を並べる手を動かせないままおばあちゃんを凝視して聞いた。

「何その服」

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