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『ある。』二十一七月

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500円玉くらいの大きさの、模様としては存在感がありすぎるサイズの花柄の袖がパフになったオレンジ色のブラウスに、外国のラッパみたいのがいっぱい付いたやつを吹いているおじさんのスカートっぽいチェックのひざ下スカートを履き、いつもはお団子の白い髪を極太のおさげにしていた。以外な毛量。おまけに前髪はきっちりセンターで分けられ、銀色のピンが左右に二本ずつぴっちりさされていた。どこかで見たことがある髪型だと思ったらインディアンだった。目に染みるほどの奇行を急に浴びたせいか、足の小指をぶつけた時みたいな怒りがこみあげてつい意地悪を言ってしまった。

「花柄にチェックって、一周回って映えだわ。おばあちゃん。ハッシュタグ つけて『#祖母カオス』ってつぶやいて言い?」

「やめなさい」と、お母さんが絶妙の間で静止した。

「朝子さん、これ、どこから出したの?」お母さんはおばあちゃんに敬語を使わない。おばあちゃんにできるだけ合わせているのだ。

「押入れよ、ずっと直してあったじゃない。どう?変?お母さんも、なっちゃんも、協力してよ!今日はデートなの」おばあちゃんはわたしを「なっちゃん」と呼ぶ。これは、昔からだ。

…ん?デート?
***

朝ごはんを食べながら、おばあちゃんはおもむろに1枚の写真を食卓に滑らせて置いた。ちなみに、今おばあちゃんのファッションは結局変更なしになった。私の服はどれもサイズが合わないし、お母さんの服はそもそも着ない(のだそうだ)他に代替えが無かったというのが正しいのだけれど。

食卓の真ん中にすり出して置かれたその写真にはぎこちない間隔をあけ並んで立つ若い男女が写っていた。

「これ…」誰?と聞こうとすると、お母さんがすかさず「これ朝子さんね!それからこっちは秀志さん」雷が落ちたように急に反応したせいでお母さんのお箸に乗っていた米の塊がボトっと落ちた。

「お母さん知ってたの?恥ずかしい。」とおばあちゃんは少し肩を上げてはにかんだ。

お母さんは写真から目を逸らさずノールックでテーブルの上に落ちた米の塊を拾い上げ、もぐもぐと食べた。

秀志とは、おじいちゃんの名前だ。中村秀志、おじいちゃんは私が生まれる前に死んでしまったから会ったことはないけれど、カメラの仕事をしていたと聞いたことがある。写真の中のおじいちゃんは細くて髪型にはあまり興味がないのか、生やしっぱなしな印象のある長目のおかっぱ頭だった。若さはもちろん感じたけれど、幼いという言葉はぴんと来なくて、青いトマトみたいな感じがした。そこでふと我に返る。

「ねぇおばあちゃん、この秀志さん、何歳?」

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