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『春巡る』伽倶夜咲良

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 京急蒲田の駅で降りるのはこれが初めてだった。
 私の住んでいる街から羽田へ向かうときに通過する駅。
 毎年、母の暮らす田舎に帰省する度、年に一度は必ずこの駅を通るのだけれど通り過ぎるだけで今まで一度も下車したことはなかった。
 もし、御朱印巡りを趣味にしていなかったらこの先も蒲田の街を訪れることはなかったかもしれない。そう、今日は蒲田八幡神社と兼務社の御朱印を頂きに来たのだ。
 最近では“御朱印ガール”なんて言葉もできて私自身もその内の一人なのだが、私が神社やお寺を巡って御朱印を集め出したのは随分と前のことだ。本格的に始めたのは高校に入ってからだが、それ以前中学二年の後半ぐらいには始めていた気がする。その頃には“御朱印ガール”なんて言葉を聞くこともなかったし、周りにそんなことをやっている女子なんていなかった。そういう意味では、“元祖御朱印ガール”と呼んでもいいと思うのだが、そんなことは自慢にもならない。「御朱印を集めてる」なんて言っても誰にも理解してもらえなかったし、「御朱印ってなに?」とか「そんなことして何が楽しいの?」とか言われて不思議な目で見られるのがオチだった。だから、敢えてそのことを友達にも話さなくなったし、いつも一人で神社やお寺を廻っていた。そんなこんなで、いつの間にか一人でいる気楽さが心地よく感じるようになってしまった。
 そんな私にことあるごとに口癖のように母が言ってくる言葉がある。昨日の夜もそうだった。
 数日前、田舎に住む母が自分の畑で取れた野菜を送ってきてくれた。一応、そのお礼と思って母に電話したのだけれど、その時言われたのがそれだ。
「美弥花も来年で三十でしょ!神社やお寺ばっかり行ってるから彼氏もできないのよ!そろそろ考えなさい。もっと若い子が集まるようなところに行かないとダメよ。そうじゃなきゃ、いつまで経ってもいい男見つからないから」
 そこからまたいつもの説教タイムが始まりそうだったので適当な相づちを返して早々に電話を切ってしまった。明日も御朱印巡りだなどとはとても言えなかった。
 母の言ってることも尤もで、わかってはいるつもりなんだけど……それはそれ、これはこれ。婚期や彼氏のことは別として御朱印巡りはやめられない。
 ああ、そんなこと考えてたらテンション下がってくるうぅ……止め々々。せっかく今日は天気も良くて神社巡りするには最高な日だっていうのに。

 今日の目的地は蒲田八幡神社とその兼務社である五つの神社。
 蒲田八幡神社、北野神社、女塚神社、御園神社、椿神社、稗田神社。
 蒲田八幡神社は昨年御朱印をリニューアルしたばかりだ。兼務社の御朱印も全て新しくなっている。
 これはもう行くしかないでしょ!と、さっそく予定を立ててやってきたのだ。

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