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『春巡る』伽倶夜咲良

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 ホームからエスカレーターを下り、幅の広い通路を改札に向かった。改札を出ると広い通路はそのまま続き、左側には1階へ続く階段とエスカレータ、右側には真っ直ぐに伸びた通路、その通路の手前右側に四角くポッカリと穴が開いたような西口への出口。改札から真すぐに続く通路は少し薄暗く、それとは対照的に四角く切り取ったような西口の出口はハレーションを起こしたような白さで輝いている。きっと、外の日差しが強いせいなのだろうと思ったが、まるで不思議な世界への入り口のようにも見えて、今日これから始まる一日への期待感からか、ほのかなときめきにも似た感情、少しだけ鼓動が高鳴ったような感覚を覚えて一瞬そこに立ち止まってしまった。
 周りの人には気づかれることなどないようなわずかな感情だけれど、なんだか少し気恥ずかしくなって照れ笑いのように顔の筋肉が緩むのを抑えられない。
 気を取り直して、白い光の窓を抜けるように西口の出口を出ると、四月後半の春の日とは思えない強い日差しが降り注ぎ少し肌がチリッとした。
 出口前は陸橋になっていて左右、真っ直ぐと、三つ叉のような構造になっていた。真っ直ぐに続く目の前には地上に降りるエスカレーターがあり、人の流れもそちらに向かっていたせいか、私も何とはなくそのエスカレーターに乗ってしまった。
 下りるとすぐにアーケードに覆われた商店街があった。入り口に少し入って覗いてみるとタイル敷きのような道路の両脇には隙間なくお店が並び、人通りもかなり多い様子だ。活気がある商店街なのだろう。こういう風景ってどことなくレトロな感じで暖かな気分になれる。どこからともなく美味しい匂いが混ざった香りが漂ってくる。飲食店が多いのかな?そういえば、蒲田は餃子が有名ってどこかで聞いた気がする。
 ――これは、帰りには美味しい餃子と生ビールかな!きっと、神社巡りで歩いて汗もかくだろうし、絶対いける!
 うっ、あたしってオヤジかな?でもでも、美味しいものは美味しいんだから仕方ないよね!
 心の中で苦笑いしながら自分で自分を納得させて、今日の目的を思い出し気持ちを切り替えた。
 目指せ!蒲田八幡神社!いざ行かん!

 蒲田八幡神社は京急の高架線路のガード沿いに西に進んで5分もかからない場所にある。
 最初の大きめの交差点を右に曲がるとすぐ先に大きな鳥居が見えてくる。
 見えてくるんだけど……鳥居のすぐ横のところが工事現場のような白い鉄の防護壁に覆われていた。
 もしかして工事中?お参りできない?御朱印拝受できないの?
 想像もしていなかった事態にドキドキしながら、恐る恐る鳥居の中を覗いてみる。奥の方にお賽銭箱らしいものが見える。お参りをしている風な人も見える。とりあえず中に入ってみよう。鳥居前で一礼をして、鳥居から奥に続く石畳を進んで行く。右手に立つ防護壁の威圧感が半端ない。奥に見えていたのはやっぱりお賽銭箱だった。実際の拝殿は覆われていてそちらには入っていけないが、仮設置(かりせっち)のように置かれた賽銭箱の前でお参りはできるようになっていた。『御朱印受付』と書かれた立て看板もある。御朱印拝受できるという安心感にほっとして、まずは、神様にお参りすることにした。お参りを済ませ、案内板が指すとおり左り手を向くと授与所が見える。授与所の窓に近づいて中を少し覗き込むようにして見ているとすぐに巫女装束を着た若い女の子が中から窓を開けてくれた。

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