可愛らしい顔つきの女の子だ。私よりも若い。十八ぐらいだろうか?いや、もしかして高校生の助勤(バイト)さんかな?白衣と緋袴にきっちりと身を包んだその姿はまぶしく見えた。その表情は軽く微笑んで口角がきゅっと上がっている。
「御朱印ですか?」
「はい」
そう応えながらも巫女様の顔から目が離せない。
――うぅ、あたしってやっぱりオヤジっぽいのかなぁ。彼氏見つけて結婚なんて当分無理そう。夕べの母の言葉を思い出して、「ママ、ごめんなさい」なんて思いがふと浮かんでしまった。でもでも、可愛い女の子を愛でて幸せな気分になるのは、男も女も関係ないよね!世界共通、人類皆共通の感覚だよね!きっと!……たぶん……
「御朱印は兼務社のものも書きますか?」
そんなバカな思いに耽っていると可愛い巫女様がまた声をかけてくれた。
「兼務社さんの御朱印もこちらでいただいた方がいいんでしょうか?」
「はい。ここでしか書いておりませんので」
「そうなんですね。それでは全ての御朱印をお願いします」
そう返事しながら御朱印帳をバッグから取り出しページを開いて手渡した。
「順番はどうしますか?」
「え?順番ってあるんですか?」
「ご自身が廻った順番で書いてください。と仰られる方もいらっしゃいますので」
――わぁ、そんなことまで気を遣ってくれるんだ。なんて優しいんだろう。その気遣いと、丁寧にゆっくりと話すその口調に心がほっこりとする。
「あ、なるほど。順番にはこだわらないので標準的なものがあればそれでお願いします」
「はい、わかりました。手書きで書いておりますので三・四十分お待たせしてしまいますがよろしいですか?」
「はい、大丈夫です」
「それでは、ここにお名前を書いてください」
差し出された受付用紙に名前を書いて手渡すと、軽く微笑むように会釈して静かに窓を閉めて巫女様は部屋の中に下がっていった。
授与所から数歩下がって、邪魔にならなさそうなところで待つことにした。そうして待っている間にも何名もの人が訪れて参拝してゆく。御朱印をお願いしている人。すでに受付済みで御朱印帳を受け取りに来た人。参拝だけして帰っていく人。お父さんと小さな女の子の二人連れ。授与所の窓口に並べられたかわいいお守りを女の子が手に取って何か話している。ご高齢の男性と女性の二人連れが鳥居の方からゆっくりとした足取りで歩いてくる。永年連れ添ったご夫婦だろうか?年の離れた女性の二人連れも御朱印をお願いしたりしている。親娘だろうか?こうして待っているだけの僅かな時間の間にも多くの人が参拝にみえている。今はそのほとんどが工事中で狭くなっている境内だけど、本来はたくさんの人達に親しまれた立派な神社なんだということがよくわかる。工事が終わった頃にもう一度来たい。そんなことを考えているうちに時間が経ったのだろう。授与所の窓が開いて私の名前を呼んでくれている。
授与所の窓口まで行くと、先ほど手渡した御朱印帳を一頁々々丁寧に捲りながら今書かれたばかりの御朱印を見せて確認をさせてくれた。墨や印が他の頁に写らないように頁ごとに紙が挟んである。こういう気配りは本当に嬉しい。初穂料をお支払いして御朱印帳を受け取りお礼を言って授与所を後にした。