『カーシャ•トッチ•シンバル』
大澤匡平
変てこな僕は、お母さんをカーシャと呼び、お父さんをトッチと呼ぶ。大学に入れば、鬱陶しくなる実家。それでも、カーシャもトッチも何故だか愛おしくて。
『亜津美の受験』
曽我部敦史
川瀬亜津美は大学受験を控える浪人生。塾に通い、ちょっとワケありの仲間たちと一年間頑張ってきた。受験間近。亜津美はプレッシャーのためか家族の行動にいちいちイラついてしまう。ようやく受験を終え、結果を知った夜。亜津美は家族全員が自分の合格を祈願していたことを知る。
『母の好きだった場所へ、もう一度』
中村美香
乳がんの手術により、左の乳房を摘出した母は、術後2年経っても、友だちから誘われた温泉旅行を断っていた。もう一度、大好きだった温泉に入って欲しい「私」は、家を温泉旅館のようにして、もてなす。「温泉郷めぐり」を入れた湯に入り、家族の温かさに触れて、母の気持ちがほぐれていく……。
『さち子の出窓』
武部縁
夜に起きていられないさち子は、転居先でパートの疲れから買った惣菜を食卓に並べるようになった母親と留守番で寂しい思いをしている妹を案じ、眠気と戦いながらも「憧れの出窓がないから社宅に帰りたい」と父親に談判する。その思いを理解した父親は社宅近くの小さな家に転居し、家族の幸せを守った。
『ひとつ屋根の下だからこそ』
広瀬厚氏
祖母由利恵、父裕二、母由美、姉由希奈、弟仁、平凡な五人家族のありふれた夏の日の話である。家族は盆休みに山へと旅行を計画していたが、盆が近づいた頃、台風が日本列島に接近していた。
『このこのこ』
坂東朋子
自立した女性を目指すように育てられた「私」は、将来の夢が「お嫁さん」だと言うのは、許されないと思って生きてきた。しかし、結婚・出産し専業主婦として育児するいま、その幸せをかみしめる日々である。そんな「私」の一日を描いた。
『カスミソウ』
藤城あゆみ
母すみれはゆり十二歳、かすみ四歳の時に亡くなった。その後、父、ゆり、かすみの三人で過ごしていた。姉、ゆりの結婚を機に家族の形がまた変わろうとしている。
『灰に溶ける』
斎藤俊介
2年前に父を亡くした祐一は、田舎の実家で一人暮らしをしている母を訪ねていた。父を亡くし、心細くはないのかと、母に尋ねる。祐一はその時、母の胸の内を知る。そしてたまたま実家を訪ねていた親戚の慎二が、煙草を吸っている祐一を見て何故か笑い出した。理由を尋ねると、それは自分と父に関わることだった。
『お互いの-月-日』
室市雅則
とある娘と母の日記。