『ゆくすえ』
吉倉妙
家庭を持ちながら、自分のゆくすえに虚無感を感じる主人公が、勤務先でのちょっとした出会いから、自分の中に独りっきりを慈しむ部分があることに気がつく。そして、妻の中にも意外な一面があって……。
『くそばばあ大会』
高瀬ユキカズ
「今から、くそばばあ大会を始めます」小学校三年生の翔太が大会の開始を告げる。誰の母親が最もひどい母親なのか激しい応酬が続いた。俺の母ちゃんが一番くそばばあだ、いや私の母親だ、いや僕の……。いろんな愚痴が飛び交う中、最後に稔が口を開く。稔の母親は去年亡くなっていた。
『妹なんか、捨ててきて』
高瀬ユキカズ
六歳の早紀と三歳の美優は姉妹で喧嘩をしていた。妹に髪を引っ張られるが、姉の早紀は叱られるから手を出せない。早紀は妹を捨ててきてと母親に訴える。捨ててくるからねと美優を抱いて母親は玄関へ。子育てに疲れている母親とお姉さんになり切れていない早紀は、それぞれ美優のいない世界を経験する。
『KIZUKAI』
霧赤忍
「ある報告」をしようと会社員の幸弘は九州の実家へ帰省する。虚をつかれた格好になりながらも温かく迎え入れる両親。幸弘はこれまでは意識しなかった親の様々な気遣いに感謝し、「家族」というものへの意識を高めていく。
『チーム・エール』
藤亘音
小五カズナはサッカークラブで信頼のおける友人やコーチから目的を達成する方法を教わった。一方家族は仲は良いのであるが、それぞれ仕事で忙しく予定がちぐはぐとなる。カズナはクラブで教わったことを生かして家族のことを優先させつつ自分の目的を達成させようとする。父母も賛同し、成功する。
『カレーライス』
佐藤良香
小学六年生の美咲。好意を寄せる雄太君と同じような、裕福な生活ができたら、すべてうまくいくのに。でも、無理。それは給料が少ない父親のせい。そんなある日、町工場へ偶然に行き、父親の働いている姿を見る。父親の淋しさが聞こえた美咲、家族を思う気持ち一つですべてが変わることに気付く。
『百日のはじまり』
菊武加庫
どこか引っ込み思案の夫は、幼少期から常に女傑に囲まれて育った。周子はそんな夫と平凡な生活を送っていた。だがある日、義母が倒れて……。
『まだ見ぬあなたへ』
手塚巧子
結婚2年目の共働き夫婦、邦和と佳織。妻の佳織は料理が苦手で、料理はいつも夫の邦和が担当している。ある日邦和が出張から自宅に戻ると、ダイニングテーブルの上に邦和の好物が並べられていた。そこで佳織から、妊娠二ヶ月目であることを告げられる。
『ヒーロー参上!!!』
浴衣なべ
仕事を解雇されやけ酒をしていた私は、帰り道で秘密結社の戦闘員に襲われ、ヒーローに助けられた。その後、その場にいた戦闘員のウッカリで秘密結社は悪事をしない、ただの悪役だと知らされる。