小説

『ヘルメット・ガール』益子悦子(『鉢かつぎ姫』(河内の国))

父が車を取ってくると保健室を出て行くと、ひょっこり現れたのは雪人だった。
「どう具合」
「心配してくれてるんだ」
と言って美音は後悔した。相変わらずかわいくない。むしろ雪人には感謝しなくてはいけないのに。
「そんなんじゃないよ。一応メッセージ伝えておこうと思ってさ」
「メッセージ?」
「JUNって人から」
「JUN? 何々? メッセージって」
「『ヘルメット・ガールにお伝え下さい。あなたはいずれ立派なギター弾きになるでしょう』」
「マジで?」
美音の声は裏返った。天にも昇る心地とはこのことだ。すると急に雪人が含み笑いするのを美音は見逃さなかった。
「だましたな!」
「だまされる方が悪いんだよ」
雪人は笑って保健室を出て行った。ヘルメット・ガール。そんな響きも悪くない。ありがとう、雪人。今度はちゃんと言葉で伝えよう。

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