小説

『なんとなく楽しい日』真銅ひろし(『浦島太郎』)

 描かなきゃ・・・。
 心の中では思っていてもなかなか体が言うことを聞かない。そんな状態。そしてズルズルとなんとなく東京暮らしをしてきたが、40の時に「あ、もう無理だ。」と感じた。理由はハッキリとは分からない。環境か、年齢によるものか、ただの直感か。何はともあれ画家として世界に名を轟かせるのは「無理だ」と悟った。
「帰るか・・・。」
 絵画教室の講師控え室でポロッと口にした。その言葉に何の疑問も抵抗もなかった。そしてそこから教室も居酒屋も辞めて、荷物をまとめて福島行きの新幹線に乗った―――――。
 これが40にして福島の実家にいる理由だ。

 
 牢屋か・・・。
 思い出の小学校に着いたのはいいが、学校全体をぐるっとフェンスで囲っていて中が見えない。昔は金網だけだったけれど時代とともに警戒が強くなっていったのだろう。
「・・・。」

 

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