小説

『なんとなく楽しい日』真銅ひろし(『浦島太郎』)

 最大の危機が去った安心感からか、そこからここに来た理由を素直に話した。
「あ~、あれね。覚えてるよ。」
 まさ君はなんとも軽い感じで答えた。
「掘り返してみる?」
「え?いいの?」
「大丈夫でしょ。自分のだけ見るんだから誰も文句言わないって。」
「そうかな・・・。」
「そうそう。とりあえず仕事終わるの待っててもらってもいい?校長にも許可取らなくちゃいけないからさ。」
「それは別にいいけど・・・。」
「じゃあ決まり。じゃあ6時頃ここで待ち合わせで。俺、仕事戻んなきゃいけないからまたね。」
 まさ君は段取りをさくっと決めて、そそくさと校舎の中に消えていった。

 約28年ぶりの小学校。
 自分とまさ君は記憶を辿りながら掘り起こしていった。
 そして1時間くらい経ったろうか。ガツッ、という金属音がしてそこを集中的に掘ったらボロボロになった長方形のカンカンが出て来た。大きさでいうと牛乳パックぐらいの大きさ。元々が何の入れ物かは不明だが、明らかに古そうだ。
「これだよね?たぶん。」
 まさ君が好奇心にあふれた表情で聞いてくる。
「たぶん。開けてみようか?」
「うん・・・。」

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