『嘘でいいから』
阿G
(『サトリのワッパ』)
他人の嘘に体が反応してしまう「嘘アレルギー」の女子高生・黒木。彼女は自らの体質を隠し、極力他人と関わらない様にして日々を過ごしていた。そんな彼女に、同級生の男子・秋月が声をかける。「写真、撮らせてもらえないかな?」撮影を通じて、黒木は秋月の秘密を知ることとなる。
『シャフリヤールの昼と夜』
里中徹
(『アラビアン・ナイト』)
主人公は離婚を契機に出張型サービスを使い始めるが、そこで不思議な女性と出会う。その女性はいつも面白い話を聞かせてくれ、会うたびに惹かれていく。しかし過去の失敗から、主人公はその先に進む勇気がでない。そんな中、主人公に転勤の話が舞い込む。
『拝啓赤ずきんさん』
熊田健大朗
(『赤ずきんちゃん』)
祖母が死んだ。どうしようもない感情に浸る男は祖母の家の棚から数枚の手紙を見つける。差出人は「赤ずきんちゃん」と名乗る女性だった。彼女が綴る「生きてみた甲斐がありました」という言葉と、彼女の過ごすたわいもない日常に興味を持った男は祖母になりすまし彼女に最後の手紙を書いた。
『おとななまはげ』
新田塚道雄
(『なまはげ(秋田民話)』)
一年に一度、悪い大人を懲らしめる『おとななまはげ』が出現する日がやってきた。私はバスルームにこもって震えていた。隣の家から、『おとななまはげ』に襲われた悲鳴が聞こえて来る。どうしよう。どうすれば『おとななまはげ』に許してもらえるのだ?
『鉢姫花伝』
三号ケイタ
(『鉢かつぎ姫』)
私の頭には、昔から鉢がかぶさっている。自分のそれが普通でないと知ってから、私はそれを受け入れて過ごすようになった。私は努めて、周りに迷惑をかけずに、周りに感謝しながらおとなしく過ごして大きくなり、そして高校を卒業したのだった。
『腫れ物地獄と純粋めいた愛』
あざらし白書
(『笠地蔵』)
十年間、まっすぐ仕事に打ち込んできた地蔵。家庭を築き、子供も生まれ、何不自由のない愛の中に生きてきていた。しかし、雪の音もとどろくある豪雪の日、爺さんの代わりに現れたのは、少しだけ特別な感情を抱いていた同級生の「あっちゃん」。あっちゃんとの出会いで、地蔵の心は乱れに乱れていき…
『亀の甲羅が割れた顛末』
三号ケイタ
(『くらげの骨なし』)
竜宮に仕える亀は、病の乙姫を救うために友人の猿を騙すかどうか悩んでいた。乙姫は幼なじみであり、一方猿は自分の親友と言ってよかった。それは亀の意志では決めようもない悩みで有り、しかし主君の竜王は乙姫を救うための手立てを亀に命令するのだった。
『銀河、夢で見た』
森な子
(『銀河鉄道の夜』)
新社会人の春子は、家族との間に溝のようなものがあることを感じていた。姉の花江は幼い頃から引きこもりがちで、両親は姉を可哀想だと言い、そんな実家を気味悪く思った春子は意を決して家を出る。ある日、苦手に思っていた姉の花江が夢に出てきて、二人は美しい銀河を走る列車に乗ることになる……。
『勇者はおばけの如く』
鈴木沙弥香
(『桃太郎』)
中学二年生の竜は、軟弱を理由に同級生たちからいじめを受けていた。いじめを苦に自殺をはかる竜の前におかしな3人の幽霊が現れる。幽霊たちは竜の寿命と引き換えにいじめっ子退治の手助けを約束する。「幽霊が寿命もらってどうすんの?」死にたがりの14歳と幽霊達の不思議な交流が始まる。
『あなたはだんだんだんだんとてもすごくきれいになる』
ノリ・ケンゾウ
(『智恵子抄』)
チエちゃんは自分の拳しか信じない。「私は私の拳しか信じない、私のすべてはこの拳の強さだし、この拳の強さだけがわたしの存在意義」が小さい頃からの口癖だった。初めてチエちゃんの口からそれを聞いたとき、私はその言葉の意味が分からなくて、チエちゃんに「ソンザイイギ、ってなに」と聞いた。
『葬儀屋』
空亡
(『河童(妖怪)の伝承』)
代々つづく葬儀店の主人である黒良は、依頼主である川中氏の邸宅に出向き、そこでミイラ化した遺体を見る。不審を抱くも家訓に従い、葬儀を成す。しかし後日、彼はまた川中氏から呼び出される。蔵に閉じ込められた彼は、その遺体の謎を聞かされるのだが――。
『地球玉手箱現象』
馬場健児
(『浦島太郎』)
ある日突然、全世界が白煙に覆われた。一瞬で全世界の人々が老人になってしまった。その瞬間を海辺のラブホテルでむかえたバンドマンの竜斗と恋人の沙織は不運にも童貞と処女のまま、お爺さんとお婆さんになってしまった・・明日のライヴはどうする!戸惑う二人の愛の行方はどこだ!