『時を盗んだ男』
永佑輔
(『貉』『時そば』『猫の茶碗』)
店主がノッペラボウの蕎麦屋に辿り着く男。先払いの代金の内の百円をチョロまかしたが、店主は目がないため作れない。男は自分の顔を店主に貸して蕎麦を作らせるが、口がなくなったせいで食えない。顔を返すよう促すと、店主は「ここで蕎麦屋をやっていると顔が百円で買える」と消えてゆく。
『勝ち山』
外﨑郁美
(『カチカチ山』)
中堅企業のX電機に勤務する中原信子、52歳。女性初の営業部長に昇格したが、その人事に納得できない部員の山下はあらゆる圧力をかけ、信子を休職へと追いやる。事態を知り怒りに震えた信子の息子、智は復讐を決意するのだが……。
『花咲かす大樹』
まる
(『こぶとりじいさん』)
国語教員の中村がある日奇妙な生徒を目撃する。その生徒は確かに自分の生徒であるのに、中村にはそれが誰なのか思い出すことができなかった。「彼」を追跡するとその先には鬼の祀られた神社があり、そこには瘤取りの逸話を持つ本物の鬼が住んでいた。
『ポンポコポコポコカグヤヒコ』
義若ユウスケ
(『竹取物語』)
ポンポコポコポコカグヤヒコはある日、恋人を車でひき殺されてしまう。復讐の鬼と化したポンポコポコポコカグヤヒコは熱々の目玉焼きを使って台所の壁をけしかけ、犯人を襲う。彼の台所の壁は見事犯人をはね殺し、復讐をとげたポンポコポコポコカグヤヒコは次に、恋人の蘇生にとりかかる……
『赤ずきん』
小町蘭
(『赤ずきんちゃん』)
男勝りでおませな少女赤ずきん。お祭りの日、お使いの途中狼に襲われるが「進歩的」な彼女は自ら狼に食べさせてしまう。食べられた赤ずきんの運命は? またフェミニスト赤ずきんの為すこととは。
『常世のモノ語』
長月竜胆
(『赤い靴』)
とある資産家夫婦が偶然立ち寄った森の洋館には、不思議な力の宿った品々が展示されていた。館の主である青年は、履けば自然に身体が踊り出すという赤い靴を紹介し、それにまつわる恐ろしい逸話を語る。夫婦は半信半疑のまま館を後にするが、その数日後、今度は夫人が一人で館を訪れて……。
『星になんてならなくていいのに』
古村勇太
(『よだかの星』『雨ニモマケズ』)
兄が死んだ。残された妹の『私』は、兄が大切にしていた宮沢賢治の本がなくなっていることに気づく。母に聞いても興味がなく、私は本を探して兄の教室に向かう。
『走れ香奈子』
杉森窓
(『走れメロス』)
腐女子でソシャゲ廃人の女子高生・香奈子は来る推しキャラのアプリ内イベントに気合い充分。寝る間も惜しんでイベントに没頭する香奈子だが途中で携帯が壊れてしまい、親友の由紀奈に助っ人を頼むことにするのだが…。