LOVE KAMATA AWARD第2期にご応募いただいた作品の中から選ばれた優秀作品20作品です。
『妻よ、君がその手を離すまで』
籐子
定年を1ヶ月後にひかえたバス運転手の芝池寛太郎。定年後は、生まれ育ったこの町で妻(ウメ)と二人、平凡な毎日を過ごすと思っていた。しかし、孫の話をきっかけに、妻の異変を知る。当たり前にある幸せの中に訪れた衝撃。その時、寛太郎が出した答えとは…。
『終わらないゴンドラ』
柿沼雅美
18歳から38歳になるまでの私たちは、世界の過渡期を生きてきたと思う。銀行の窓口もスーパーのレジも介護も交通整理も全てAIになった。都会は透明なビルと整然と植えられた植物で洗礼されたけれど、蒲田にはまだ昔の名残があって、私たちはまた蒲田で顔を合わせた。
『出会い、別れ、思い出の街』
ウダ・タマキ
一分一秒の時間に追われる慌ただしい日々。もどかしい程に時の流れが遅かった子ども時代。あの頃、商店街の駄菓子屋で出会ったおじいさん。僕の時計の針は、その出会いからようやく動き始めた。
『呑々村の子どもたち』
伊原文樹
十二年ぶりに実家の街に戻り塾講師を始めた私。個別指導で教える彩乃とマサトの進路を気にかけながら、私は小学校のときに“しょんべんカーブ”を教えてくれた「野々村のおっちゃん」の思い出とともに、中華料理屋のヤンさんをはじめ駅前商店街の温かい人々と出会っていく。
『虹が瞳にかかるとき』
福川永介
大雨のある日。女子高生の沙織は、帰宅途中に見知らぬ老爺から傘をもらう。それは、祖母幸子の旧友の傘かもしれないということが分かった。その時、祖母が突然倒れてしまう。そして、下咽頭がんが見つかった。手術で声を失ってしまう前に、沙織はその老爺を探そうと、蒲田の街にかけだすのだが―
『晩秋』
久保寺淳子
小劇場で活躍する女優の佐和にとって大事な人が亡くなる。胸の内で去来する様々な思いを抱えて舞台の千秋楽を終えた佐和の前に、恩人の娘が現れる。故人の形見分けの本を渡したいと言われ、蒲田の東急プラザの屋上で会う約束をするが…。
『僕の中のピンク』
藤井あやめ
母親が出産の為、蒲田の伯父の家に預けられた祐。始めは兄弟が出来る事を楽しみに思っていたが、次第に親の愛情や居場所を求め不安になっていた。
幼い男の子に芽生える小さなプライドと、どうすることも出来ない現実に悩むが、地域の人々との繋がりに触れ、愛に気付き次第に兄になる勇気を持ち始める。
『父のざんげ』
津古づっこ
もうすぐ長女の初産を迎えるヤマダ一家は、生まれてくる赤ちゃんの話で盛り上がる。長男と次女が幼い頃に親しんだ屋上遊園地の話を始めると、聞いていた父が自分は行ったことがないと言い出す。次女はしぶしぶ、父と屋上遊園地へ出向き、思い出の観覧車に乗ることになる。
『Kamata Katamata』
室市雅則
突然、蒲田にいる人々が固まってしまった。まるでバリアができたように内部への侵入は不可能となり、誰も手を打つことができない。しかし、『蒲田温泉』で入浴をしていた少年とその祖父だけは動くことができた。異変に気付いた彼らがこの街を救うために立ち上がる。