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『父のざんげ』津古づっこ

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 日曜の朝食に家族全員が揃っているなんて、いつ以来だろう。
 我が家では珍しすぎて、何か吉凶の兆しではないかと疑ってしまう。
 お父さん、今日はゴルフも釣りもないの? お母さん、土日祝日は主婦休業日でおさんどんしないんじゃなかったっけ? お兄ちゃん、日曜日には午前十時までの時間は存在しないって言ってたよね? 
 最近のヤマダ家は、一家揃ってそわそわしていて調子が狂う。
 かくいう私も、予定もないのに日曜の午前七時のダイニングテーブルについている。なんだこれ、まるで健康で優良な高校二年生じゃないか。こんなの私らしくないのだけれど、仕方ない。
 去年結婚して家を出た春子姉ちゃんが、来週にも出産のために入院する予定になっている。
 初産は予定より大幅に早かったり遅かったりするものだというから、いつ唐突に「生まれそう」なんて連絡が入るか、家族全員気が気でないのだ。
「生まれたらね、しばらく赤ちゃんと一緒にうちへ帰って来るって言ってたわ」
 母は健康のために続けている寝覚めの白湯を啜りながら言った。「待ち遠しいけど、あんまり早くても困っちゃうわよねぇ」
 初孫のために鋭意制作中のおむつケーキが、まだ仕上がっていないのだ。
 兄は髪のあちこちを寝ぐせで前衛的にはねさせながら、ふふん、と得意げに鼻を鳴らした。
「生まれてくるのは男の子だからな。おれの弟分として英才教育を施してやるんだ」
「ちょっと余計なことしないでよ。夏生兄ちゃんに教育されたら甥っ子にバカがうつっちゃうよ」
 私が慌てて反論すると、兄は手加減なしに人差し指で私の鼻を押してブタ鼻にした。
「いたいいたいいたい、やめてよバカ、死んじゃえ」
「兄に逆らうとどういう目に遭うか、まだ学ばないか。バカなやつめ」
 バカという単語がとにかく行き交う馬鹿馬鹿しいやりとりだけれど、私も兄もいたって本気である。こんなくだらないケンカはいつものことなので、父は気にも留めずに新聞を読んでいる。大学生の息子と高校生の娘のケンカになぞ、今さら関わっていられないのだろう。
「“ここでは仕事を持たないものは湯婆婆に動物にされてしまう”」
 兄が、洒落にならないほど下手なモノマネをして私の鼻をどんどん突き上げる。
「自分だってまだ働いてないじゃんか。バカ、本当にブタになっちゃうよ、やめてよ」
 私が泣き出す寸前で、母がやっと仲裁に入ってくる。
「夏生も千秋も、いい加減にしなさい。あんたたち叔父さんに叔母さんになるのよ。甥っ子のお手本にならなきゃダメでしょ」

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