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『僕の中のピンク』藤井あやめ

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 着替えの入ったボストンバッグを担いだ父さんと、とりあえず詰め込んだ夏休みの宿題が入ったリュックを背負った僕は、暑さで空気の歪む蒲田駅にホームに降り立った。

 昨日、母さんが入院した。
 僕の妹は予定よりも早く産まれたいようだ。
 三週間も早いうえ、父さんのどうしても抜けられない仕事とかで、僕は急きょ蒲田の俊弘伯父さんの家にお世話になることになった。

「祐、行くぞ。」
 次の電車に乗り込む人の波に揉まれながら、父さんの後に張り付いて階段を上る。

「家に赤ちゃんが来るよ。」と聞かされたのは去年の冬。
 もうすぐクリスマスという時期だった。最初のうちは、僕は楽しみで仕方なかった。

 同じクラスのあっちゃんも妹がいるし、林君は弟だけど、だいたい遊ぶ時はくっついてきて、
 戦隊ごっこでは2対1で兄の味方にまわる。
 いつも僕が負けるから、こっちにも応援がほしいと思っていた。
 妹でも鍛えれば僕の仲間になれるはず。僕は早く妹に会いたかった。

 家族みんながワクワクしていた。
 それと同時に、ピンク色のグッズが家の中に増え始めていった。
 ランチョンマット、台拭き、メモ帳なんかも前より可愛いものになっている。
 そのうち、僕のパジャマもピンク色にされるんじゃないかとヒヤヒヤしたぐらいだ。
 もともとフリルや花柄が好きだった母親だったが、これを期に何かが爆発したように見えた。

 リビング件遊び場にあった僕の服は、一式寝室に移されて、チャラチャラした飾りのついたベビーベッドが、我こそ主役とばかりに置かれている。
 お気に入りだった空色のラグも、いつの間にか薄いピンクの花柄に変わっていた。
 正直、僕はピンクなんて大嫌いだ。

 こんなの嫌だよと言ってみたことがあったが、「これから赤ちゃんが来るんだもの。お部屋を綺麗にしなくちゃ。ね?それにとっても汚れてたじゃない。」と言われた。
 確かに、染みだらけで毛羽だっていたし、僕のハサミがどれだけ切れるのか、ラグの端を切ったこともあった。どうやらそれはバレずに済んだらしい。

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