『スイカ』
山本真広
幼稚園生のわたしは祖母の家に泊まりに行った。両親達はみんな昼寝をしているなかひとりわたしが起きているのに祖母が気が付き、わたしにお菓子を買ってくれるために近所のスーパーに連れて行く。両親に黙って家を出たことに落ち着かないまま、けれど早く帰ろうとも言えず叔母の家にも寄ってしまう……
『或る家の灯』
前田雅峰
順次は地方の軌道の通る沿線に生まれた。中学を卒業すると、同級生の殆どが故郷を離れる中、順次は両親と地元を愛して故郷の軌道に就職した。手の届かない綺麗な女性に憧れ、その時に自分の服装を恥じるが、家族の有難さを想って自分を叱る。そんな順次に声を掛けてくれた駅の売り子の女性と出逢う。
『心のお守り』
中村ひな
今年の春から、社会人になり、実家を出て念願の一人暮らしを始めた。しかし、それは想像していた生活とは全く違い・・・。どん底に落ちたとき、私を救ってくれたのは家族の温かさだった。
『おめでとう』
春菊菜々
産婦人科の病院で看護師をしている主人公。子供が生まれた瞬間のその様子を傍らで介助しながらも、自分の家族にそれを重ね合わせる。そしてとある日に先輩看護師に言われた一言に、主人公は家族について考えるようになる……
『土曜日』
高瀬メロン
ぼくが幸せなのはいつだって土曜日なんだ。
『遙かなる道標』
伽倶夜咲良
折れ目が破れかけた古い地図。その地図に導かれて男はここまで来た。男は山を登り、とある場所を目指していた。お伽話に出てくる宝の地図のようにも見えるその地図にはある場所までの道順と目的地が記されていた。その目的地を男が目指した理由とは。目指した先に秘めた想いとは……。
『知らない』
室市雅則
両親のスネをかじって生きる男。思わぬ収入を得たので、親孝行と思い立ちプレゼントを買おうとするが、両親の好みも何も知らないことに気が付いた。
『最後のキス』
太田ユミ子
過去につながる電話が発明されモニターに絵里子が選ばれる。電話をかけるのは交通事故で亡くなった父。運命を変えられるかと思ったが、「過去に戻って人生を変えることが出来たら、今を生きる意味がない。今、この時がかけがえのない瞬間だから、がんばれるし人生はおもしろい」母の言葉で思い直す