『エチュード』
古海カナエ
仕事をクビになった「私」は美容院で仕事について尋ねられ、無職であることを隠すために、自分は役者だと嘘をついてしまう。美容院に通う度に、ありもしない役について語り嘘を重ねていく「私」。些細な見栄で演じ始めた「役者の役」は、少しずつ「私」の人生を変えていった。
『さくらさかせて』
入槌ケンタウロス
人生初のヘアカラーをしに美容院に来ている主人公ミサキ。ところが出るのはため息ばかり。先日の高校の卒業式で片思いの彼に告白するつもりだったのに、結局出来ずじまいだったのだ。しかし美容師のやまちゃんによって美しく変身することができて、気持ちに変化が。そこへなんと、隣に彼が現れて……
『髪、切った?』
小川いのり
髪を切るとその理由を詮索してくる同僚が嫌で、何年も髪型を変えていない地味な主人公。しかしその同僚が退職し、髪型を変えることを決意する。新しい髪型で出勤すると「髪、切った?」と笑顔で声をかけてくれる同僚が現れ、主人公は自分の変化に気づいてもらえることに初めて幸せを感じる。
『明日は何色』
史香
ブラック企業に勤め、休みなく働いていた⾼梨はある⽇会社の倒産により急にリストラされ無職になる。これからどうやって⽣きていくかを悩んでいた時、近所の美容室のチラシを発⾒し向かった美容室で出会った美容師の話を聴く中で⾼梨の⼼は動かされていく。
『6位は安らかに眠り』
微塵粉
かつて床屋を愛した少年、章太郎は決断する。イケメンに憧れて、あの人に憧れられたくて。心をくすぐられるような日々。日々。日々。おやすみなさい。
『もうひとつの家』
宮沢早紀
母の介助のために帰省した私は美容室へ行くが、出された雑誌は偶然にも自身が挿絵を手掛けたものだった。美容師との話を通じて、雑誌を母が持ち込んだことや知らない母の一面を私は知る。髪が仕上がる頃には、母にとって美容室がもうひとつの家のような存在だと私は気付き、母の介助に前向きになる。
『さあ、魔法を教えてあげる』
結咲こはる
中学3年の藤吉ほのかは、卒業を目前に3年間片思いしてきた大場の告白するも撃沈。それも、振られた理由がコンプレックスでもある自分の髪が原因だった。そんなほのかが縮毛矯正をかけようと思い切っていった美容室で、スタイリストの瀬尾裕太に出会うことで、コンプレックスこそが自分に似合うものだと知る。
『あなたのとなり』
土井克馬
いつも通り僕のお店に髪を切りに来てくれた町川君が初恋の想い出を話してくれた。小学生の頃に出会った別の学校の女の子。彼女は急に転校してしまいお別れも言えず、今でもその子のことが胸に残っていると。僕は同じ話を聞いたことがある。それは今、まさに隣に座っている舞衣ちゃんから聞いていて……
『青いパンクは女神のしるし』
友貴朱音
矢島友明(25)と妹の麗美(19)が営む美容室に、暗い顔をした若い女性がやって来る。2日後また来た女性は長い髪を切り、青髪ショートにして欲しいと言う。実は遺影を撮影するためだった。程よい距離感の美容室だからこそ本音を話せた女性に兄妹は、大丈夫!あなたはまたここに来ます!と根拠もなく励ます。
『シンデレラの日』
岩瀬朝香
美容院の日、母はシンデレラのように、育児に追われる日々を抜け出して美しい女性へと変身する。たった数時間の魔法の時間。その魔法を解くのは私たちだ。いつからかその事に後ろめたさを覚えるようになった中学生の私。そんな時、母から美容院に一緒に行こうと誘われて、美容師の川原さんに出会う。
『前髪と金魚』
鈴木美葉
「先輩は黒髪ロングが好きなんだって」親友が黒染めした夏祭りの日、私は先輩に告白された。わだかまりを抱えながらその先輩と付き合っている私は、住宅街で店先に金魚水槽が置いてある美容室を見つける。少し変わった美容師に胸の内を明かし、新しい髪形になった私は素直な自分を見つける。
『まっすぐ行けばもうすぐ』
大西千夏
バイト帰り、「私」は突然男性に声をかけられる。一回髪を切るのにかける値段を聞かれただけだったが、そのことがどうにも頭から離れない「私」は半年ぶりにいつも行っていた美容院に出向く。そしていつも担当してくれていた美容師・大橋さんに、今までしてこなかったお願いをしてみる。