『昇る煙』
洗い熊Q
俺は親父が苦手だった。玄関先で偉そうに煙草を吸うあの姿。他人に見られるのが恥ずかしかった。
『ガーディアン』
十六夜博士
会社員の中井には、適齢期の娘がいた。自分の娘が結婚することになり、娘がどこぞの男に奪われると嘆く同僚の西村。西村と同じく、中井も娘を手放したくないと思っていた。そんな中井は、娘に彼氏ができないようにある秘策を仕込んでいた……
『家族チェンジ』
九(いちじく)
朝起きると、コウスケの両親が別人になっていた。初めは戸惑っていたコウスケだったが、サンタに優しい両親が欲しいと願っていたのを思い出し、サンタのプレゼントだと信じる。テストで悪い点をとっても怒られず、嫌いな食べ物を残しても怒られない優しい家族に満足するコウスケだったが……。
『麻子さんのつづき』
あねのほるん
事故に遭った兄の療養にと私が祖父から譲り受けたのは、田舎の一軒家だった。初めて暮らす大きな家。僅かに残された家財道具と随所の痛み。こんな家どう手入れしよう。そんなある日、私は食器棚の奥で一冊のノートを見つける。そしてそのノートとの出会いが、古い家の姿をどんどん変えていく……
『柚は幸せの素』
守村知紘
横暴な夫と別れて、小学生一年生の娘を抱えて生きて行くことになったシングルマザー。自分の決断のせいで、娘に不自由をかけていることを密かに気にしていた。しかし娘が宛てた五百円分の商品券をきっかけに大切なことに気づかされ、誰にも言えないでいた苦悩が思いがけず癒される。
『ボロ家とせっけん』
村崎えん
「お化け屋敷」と呼ばれていたボロ家で過ごした幼少期。貧乏だったけど、母はいつも明るかった。家を出て初めて気づく、母の想い、自分の成長。
『永遠記念日』
藤崎伊織
家族を遺して死んでしまった私は、何故かあの世からのお迎えが来ないので、家族の日常を眺めて過ごす事にした。霊だけに会話が出来ないもどかしさにやきもきしつつも、家族の大切さと愛しさを噛みしめる。夫への愛情、家族の温かさ、別離の寂しさ、遺していく無念さ、自分の様々な感情に直面する。
『たことカーテン』
半田縁起
普段働きづめの主人公は貴重な休日に、息子に誘われて凧揚げをすることにした。辺りが暗くなって息子に帰宅を促すも帰りたくないと駄々をこねる息子に、主人公は怒鳴ってしまう。帰り道に会った妻と家に帰ると、息子たちが手作りの結婚式を用意していた。
『ミルクに溶けて』
音華みつ
学生の結菜はクラスで友達と上手くいっていない。悩んでいる自分を見て家族に心配してほしくないと思い、いつも通り明るく振る舞う。だが、家族には結菜が悩んでいることがお見通しだった。悩んでいることを知っていて何も言わず、見守ってくれていたとわかり、結菜は前を向き始める。